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「常識の延長線上には勝利はない」

 常にデータを読み取り、頭を高回転させ続けてきた眞鍋が、珍しく表情を歪ませた。

「松平さんから“常識の延長線上には勝利はない”と言われた言葉が頭から離れません。今回銅メダルだったということは、まだ僕も常識に囚われている部分があるんだと思います。この課題は、リオまでにクリアしたい」

 常識にはないアイディアをひねり出し、ジャパンオリジナルのどんな技を生み出せるのか――。

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 一方で、ロンドン五輪に出場した選手たちは、銅メダルを獲得した瞬間は喜びを爆発させたものの、しばらくすると「やっぱり真ん中に立ちたい」と口にしはじめた。

 東洋の魔女から脈々と受け継がれてきた金メダル遺伝子の目覚めである。

 ロンドン五輪後、世界一の選手を育て全日本に送り出すというテーマを掲げて久光製薬の監督に就任した中田久美が、監督就任1年目で全日本選手権、V・プレミアリーグ、黒鷲旗でチームを優勝させた。「世界一しか興味が無い」と断言する中田は、日本女子バレーの権化のような人物だ。そんな中田魂を注入された久光の選手たち、岡山シーガルズの18歳のセッター宮下遥をはじめとする若い芽も多く台頭し、日の丸女子バレーに磨きがかかる気配は確かにある。

2020東京五輪で全日本女子バレーを率いた中田久美監督 ©文藝春秋

 そして、新生眞鍋ジャパンの主将には、厳しいトルコリーグでさらに鍛え上げられた木村沙織が決まった。

 眞鍋、そして選手たちの視線の先にある2016年リオデジャネイロ五輪。

 3度目の黄金の扉がブラジルで開かれることを願う。