天皇陛下が即位し、5月1日で3年が経った。2020年以降はコロナ禍によりお出ましが難しくなり、オンラインの活用など国民との交流の方法も変化した。15年以上にわたり皇室取材を続けてきた共同通信の大木賢一編集委員が見た、令和の皇室の姿とは。(全2回の1回目。後編を読む)
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即位後の天皇陛下がこれまでに口にされた「お言葉」の中で、気になっている表現がある。「信じる」という言葉だ。天皇が使う表現として新味があるのではないかと思い至ったのは、ごく最近のこと。考えようによっては、令和の天皇陛下が国民との新たな関係性を構築しようと模索しているようにも感じられる。この言葉が使われるようになった経緯について考えた。
コロナから約1年後の「ビデオメッセージ」
私が初めてこの言葉の存在に気付いたのは、2021(令和3)年正月の、天皇、皇后両陛下による「新年ビデオメッセージ」だった。陛下はこの中で多くの時間を費やして、新型コロナウイルスの感染拡大に触れた。
感染は前年の初めから本格的に拡大し、欧州など各国の国王はコロナへの心構えなどを国民に訴えかけるメッセージを次々に発出していたが、日本では、結局約1年後のこの「ビデオメッセージ」で、やっと実現することになった。
メッセージで陛下はこう語っている。
私たち人類は、これまで幾度も恐ろしい疫病や大きな自然災害に見舞われてきました。しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えてきたものと思います。今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、進んで行くことを心から願っています。
陛下は「安心して暮らせる日が来ること」を「信じる」と言っているのだ。