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錦織 ただ、変な風にとられちゃうと困るけど。もちろん事務所にいたときも思ってたよ。そのとき一番幸せだって。でも俺は、「今」が一番幸せ。今までの人生の中で、「今」が一番幸せだからね。

 まぁ、これは収入とかはわからんよ。悪意のあるジャーナリストとか、「当時はあれくらい稼いだのに……」とか書いたりするじゃない。「あの頃はこれくらいで、今はこんだけかよ」とかね。でも人の幸せってわからない。金がなくても幸せだったらいいじゃない。俺は今、「全然幸せ!」って言えますから。

「僕らの仕事って、自分がやりたくても呼んでもらえないとできない仕事じゃないですか」 (撮影:佐藤亘/文藝春秋)

「僕に違う魅力を感じていた人の夢を壊してしまうかもしれないけど」

――改めてですが、錦織さんは、歌、ダンスなど表舞台だけでなく、演出でも活躍されています。それぞれの仕事に対する意識に違いはありますか?

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錦織 僕の本質が、実は……、僕は歌とかダンスより芝居が好きなんです。これはある意味、僕に違う魅力を感じて観てくれていた人の夢を壊してしまうかもしれないけど。僕は元々芝居が好きだし、本当は映画に進みたかった。

 ただ、自分が最初にはじめた仕事がバックダンサーだったから、なんとなくダンス絡みの仕事が多くなってしまった感じで。それに、僕らの仕事って、自分がやりたくても呼んでもらえないとできない仕事じゃないですか。だから、映画の扉は開かなかったけど、映画を舞台にした作品を作ったりしてるし、それはそれでいいだろうって思ってる。

「『蒲田行進曲』を見て、『あぁ、芝居ってカッコいいな……!』って思いましたね」 (撮影:佐藤亘/文藝春秋)

――そもそも、舞台に興味を持たれたのはいつごろからでしょうか? 芸能界に入っていろいろなお仕事を経験されてからなのか、それより以前からお好きだったのか。 

錦織 舞台をやる前、僕は高校のときから小説を読むのが好きだったんです。当時、たまたま書店で「つかこうへい」という平仮名の名前を背表紙で見つけて。読んでみたらすごく面白くってさ。いわゆる教育者が勧めるような「宮沢賢治」とか「夏目漱石」じゃないですよ。「なんだ貴様は!」って書いてあるような、つかさんの本を読んで、この人面白い!って思ったね。

 しかも、ちょうどピッタンコで、つかさんの映画『蒲田行進曲』が上映されてたの。京都の太秦撮影所を舞台にした映画だったんだけど、それを観て「あぁ、芝居ってカッコいいな……!」って思いましたね。