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――10代の頃からだったのですね。

錦織 念願叶って、つかさんの舞台に出させてもらったのが、それから10年以上経ってから。30歳超えてやっとです。本当はもっと若くしてやりたかったんですけど。

――その後も、舞台に出る側と、演出する側と活躍されますが、両方経験したからこそわかることってありますか?

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錦織 演出する側に回ってきたからこそ分かった景色ってあるよね。役者の居住まい、どうしたら居方がカッコよく見えるのか。どう立ち回るか、とかね。ただ、俺も当時は尖ってたから。自分が舞台に出るときは、演出家にたてついて、生意気なことを言って、ガンガンガンガン意見言ってたときもあったよ。その当時の自分を思い出すと恥ずかしくて仕方ないね。タイムマシーンがあったら、その時代に戻って自分をぶん殴りたいもんね。

「タイムマシーンがあったら、その時代に戻って自分をぶん殴りたいもんね」 (撮影:佐藤亘/文藝春秋)

「僕が好きなのはね、明け方の西新宿なんだよ」

――ところで、お仕事をする上で行き詰ったときや、思考の整理はどのようにしていますか?

錦織 たとえば四国に仕事で行くとするでしょ。1カ月くらい滞在することも多いから車も持ってくわけ。自分で車を運転して、東京を出て、大阪でワンクッション入れて2日間くらいかけて四国に入っていくんだけど、そのときに色々考えられるんだよ。あの話はああだったかもしれないとか、ふと台詞が浮かんできたりね。

 それがさ、不思議なことにマネージャーが運転して、自分が後部座席に乗ってるときは、全然思い浮かばないの。なんだろうね。

――不思議ですね。夜の高速を走ったりもするんですか?

錦織 僕が好きなのはね、明け方の西新宿なんだよ。明け方の西新宿に行くと、あの新宿という街が眠り出したような気がして。京王プラザとか都庁があるあたりの立体交差になってるところ。

 あと、自転車も好きでさ。一人で半日ぐらい乗ってるときもあるよ。多摩川とか羽田の方に行ったり、大井ふ頭とかね。自転車を延々と漕いでるだけで気が紛れてくるのか、集中してるのかわからないけど。そういうときってすごく浮かんでくるんだよね。

――動きながら思考がクリアになっていくような。

錦織 だから脚本書くときも誰か呼んで、俺が動きながら、喋りながら台詞とか作っていくから口述筆記にしてもらうの。そもそも、子どもの頃から机になんか向かってなかったしね(笑)。