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「もう地方は救えない」自治体消滅ドミノと地方経済崩壊までの一里塚

神奈川県から3政令市が「独立」という動きも

2022/05/12
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 コロナ対策で自治体の負担が大きくなり、また将来の高齢者対策予算を積み上げないと横浜市全体で財政のサステナビリティが大変なことが見越されるいま、神奈川県という枠組みに留まって市政を続けていいのか、生きていけるのかって聞かれたら、「まあ、大変っすよね」と思うわけです。

 いまではすっかり立ち消えになってしまいましたが、ガースーこと菅義偉さんが総理大臣としてお膝元の横浜にカジノ(滞在型リゾート)を誘致しようとしたのも、単に儲かりそうだからということではなく、インバウンド需要をうまく取り込んでいかないと横浜市が大変なことになるという危機感の表れだったんだろうなあとは思います。カジノが本当に成功して儲かるかどうかは別として。

「格差問題」に「都市地方問題」で地方経済は崩壊寸前

 また、横浜市でも顕著ですが、子どもを助ける保育園や認定こども園への歳出が、子ども1人当たり年間142万円あまりと高額になっていて、おそらく今後は小学校以降の学童保育にも予算が増えていくでしょう。したがって、横浜市も他の政令市と同様に、この育児と高齢者対策(それに加えて生活保護)という福祉予算の重りがどんどん大きくなっていきます。

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 兵庫県明石市と同様に極端な子ども政策シフトを組もうにも、長らく貿易港として栄えてきた横浜市のレガシーコストが大きく、また別予算に転用するのもむつかしい。横浜市単体の努力でどうにかするのは手詰まりになりつつあります。

 神奈川県の財政という観点では、実際には維新の会がはびこる大阪府や大阪市などよりよほど健全でまともな運営をしています。頑張っとるなあ。世間から馬鹿にされがちな黒岩知事の汚名は返上したいと思えるぐらいで、小池百合子そっちにやるから黒岩さん東京都知事どうですかと言いたくなる状態です。その底流には神奈川県内の地盤沈下がひどくてヤバい市町村問題が流れています。

 名指しするのもよくないですが、要するに三浦半島に位置する三浦市と横須賀市が神奈川県内格差の原因となっており、これは神奈川経済の構造的な問題に端を発しています。決して三浦市民や横須賀市民が駄目なわけでも、市長が無能なわけでもないというのが現実ですが、人口流出にともなう市税税収の構造的な悪化に歯止めがかからないのは、典型的な田舎の地方自治体あるあると割り切れないものがあります。ちなみに、この両市を統べる衆議院選挙区は悪名高き神奈川11区であり、そこから小選挙区で選出された議員こそ、俺たちの小泉進次郎大先生であることは念頭に置いておいていただければとも思います。

 もともとは三崎港を中心とした漁業が盛んであった一方、横須賀にある米軍基地を擁する三浦半島は豊かな自然を育む山地であり平野が少なく、電電公社がかつて横須賀リサーチパーク(YRP)という通信業界の一大研究開発拠点を置いたものの、主要企業の研究施設撤退にともなってパークではなくプリズンとなり、地元経済沈没の大きな一因となったことは指摘されるべきかとも思います。この穴を埋めるには、横須賀にある海洋研究開発機構(JAMSTEC)の予算と人員を30倍にして対抗するしかありませんが、そういう話もあまり聞きません。