文春オンライン

「もう地方は救えない」自治体消滅ドミノと地方経済崩壊までの一里塚

神奈川県から3政令市が「独立」という動きも

2022/05/12
note

 当然、そこで働いていた人はより便利で稼げる都市部に移り住み、横須賀市の高齢化率は31.8%(2020年)。「東洋経済」で旦木瑞穂さんに「遺骨が引き取られない自治体」と名指しで批判されて、大変な物議を醸したのは記憶に新しいところです。旦木さんに対して「悪質な中傷だ」と激怒する市関係者もいたようですが、はっきり言えば、私は旦木さんが正しいと思います。

高齢化が進む横須賀市で「無縁遺骨」が急増 スマホの普及で「家族に連絡さえできない」 - 東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/307551

神奈川県の問題は日本経済の縮図だ

 それどころか、人口5万人を切って久しい三浦市の高齢化率はさらに高く、40.8%に達します。これがどのくらい高いのかといえば、高齢化「先進地域」とされる秋田県の高齢化率が全体で38.5%です。それより高いのが三浦市なんですよね。

ADVERTISEMENT

 漁業と農業が中心で、いまなお土地が隆起している三浦市は、首都圏の一角・神奈川県を代表する田舎とも言えます。私もコロナが流行るまでは子どもたちを連れてマホロバ・マインズによく逗留していましたが、寂れっぷりがハンパないんですよね。三浦半島は小網代の森など自然に溢れていて三崎港大好きですし、マグロほか海産物はとても旨いですが、じゃあそこに家族連れて住むかと訊かれたら「いえ、結構です」となるのが普通じゃないかと思うんですよ。

 ここまでくると、人の住んでいない地域に神奈川県が県税を注ぎ込み、生活で人が困っている横浜や川崎に予算が回らないというのは、真の意味で日本経済の縮図となっていると言えます。「都市部への人口集約をさせるな」「地方に分散しろ」というほうが無理筋で、医療であれ産業であれ学校であれ、自治体が自活的に保つことのできる都市機能を支える人口以下になってしまった自治体は、うまく消滅させるしか方法がなくなっていくでしょう。

 その先鞭は北海道でも山陰でも南九州でもなく、先に首都圏である神奈川県からドーンと出てきた。それも小泉進次郎の選挙区が原因じゃねえか、というのは非常に興味深い事例になっています。

すでに地方では安全に子どもを産めなくなっている

 おそらく、最初に崩れるのは医療であって、昨年6月、同じく過疎地域の石川県輪島市の市立輪島病院で、新生児が亡くなった事故がありました。なぜか産科医師の誤診によるものと輪島市が正式に発表してしまい、医療クラスタでも物議を醸しました。

 複数の市・自治体を跨いで産科医1人で診療していたところ、緊急を要する胎盤剥離でも起きようものなら助かるはずもないんですよね。医師の偏在問題は、医師需給分科会などでもかねて議論になっていたところですが、そもそも設備も受診件数もないような地方の医療を支える医師が、リスク承知で現地に配置されるようなことなどまずありません。