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歯切れの悪い回答しかしない校長と教頭

 街のシンボルのヤシの木も木枯らしで震えているように見えた。

 11月に入ると、聖子の精神状態は1学期よりもひどくなってきた。テレビを見ているときにも視点が定まらず、ぼーっとしている。髪の毛を抜いたり、夜中にうなされたりすることが頻繁になった。感情が高ぶり、ちょっとしたことで憤慨したり、泣き出したりする。これまで無口であまり自分の感情を表さない子だっただけに、その変化はまるで別人のようだった。

 やはり、このままで済ませてはいけない――。

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 積み上がる被害の告白と、学校側のゼロ回答の落差に途方に暮れていたが、再度、愛ちゃんの両親と一緒に、学校側と話し合うことにした。

 午後6時。児童たちが下校していなくなった学校を4人で訪れ、伊地知校長と角田教頭に2学期に入ってから娘たちが話した被害内容を説明した。

 ・胸を触られた

 ・パンツの中に手を入れられた

 ・局部を見せられた、触らせられた

 ・手洗い場で胸を触られた

 ・トイレに向かって「いるんだろう!」と叫ばれた

 ・カーテンの中で触られた

 ・くすぐるときに顔をパンチされた

 ・「お金を出せ」と言われた

 ・「お腹をカッターで切るからね」と言われた

 ・頭を床に打ち付けられた

 ・階段の上から押されてケガをした

 ・「幽霊のような髪の毛だね」と言われた

 ・カッターで手を切られた

 ・たびたび殴られて、「やり過ぎです」と注意した補助教員にも「黙っていろ」と言っていた

 ・ふくらはぎを触らせ、「豆腐のようにふわふわしているだろう」と言われた

 ・「俺の子を産まないとカッターで切るからね」と言われた

 ・たこ糸で首を絞められた

 ・「トイレに流してやろうか」と言われた

 ・プールでボールを当てられ、ガムテープで手足を縛られた

 ・観葉植物の受け皿で頭をたたかれた

 ・顔にガムテープを貼られた

 ・「お前ら人生卒業だ」と言われた

 ・パンツを下ろされそうになった

 ・4年生の合同体育の時間に空き教室で下半身を出して踊っていた

 全部で24項目。下を向いてひたすらメモを取っていた伊地知校長と角田教頭に懇願した。

「もう一度、しっかり調べてください」

「事実なら大変なことですが……」

 伊地知校長は再び机に目を落とした。

「聖子も私もPTSDと診断され、薬を出してもらっています」

「……」

「ぜひ調べていただけるようお願いします」

「再度、担任と補助教員に事実を確認します」

 翌日には市教委にも経緯を説明した。対応した福士次長は力強く約束した。

「全職員に1人ずつ調査を行います。高木先生本人にも事実を確認したうえで、結果をご連絡しますから」

 だが、高木先生の処遇に話が及ぶと、急につれない態度になった。