「作っている人が楽しくないと、見ている人も楽しくない」
長野 ロングスカートを穿いていると、ジミー大西さんが必ずスカートの中に入ってきたり(笑)。西川のりおさんがいつものように私に抱き着いてきたときに、山田邦子さんが「長野、蹴とばしちゃいなよ」と耳打ちしてくれたんです。「いいんですか?」と聞きつつ、思いっきり蹴飛ばしました。「変なアナウンサーが出てきた」と、話題になって、みなさんに顔と名前を覚えていただいた(笑)。
永井 それが、「うめだ花月」に通った長野さんの前に現れた「扉」だったんですね。
長野 山田邦子さんには感謝です。スタッフ、出演者たちとの奇蹟的な出会いは宝物です。「面白いものを作ろう」という同じ志を持った仲間たちと、一生懸命、全力で準備をして、なんとか放送にこぎつけて、打ち上げをして。テレビ局って、毎日が文化祭だな、と思っていました。
永井 すごく分かります。文化祭当日にどれだけのことができるか、と。私も含めて、残業時間や福利厚生のことなんて、まったく考えてない人たちばっかりでしたね。
長野 今の時代にこんな話をしていたら、「何を言っているんだ」と叱られると思いますが、当時はそんな雰囲気だったんです。
永井 あの当時の日テレは4冠王でそれを牽引した演出家の一人が、吉川さんでした。「世界まる見え!テレビ特捜部」「恋のから騒ぎ」手がける作品全部ヒット作でしたよね。私も特番で良く声をかけて頂きましたが、吉川さんには決して妥協というものがない。
吉川 私もむちゃくちゃでした(笑)。ただ、「作っている人が楽しくないと、見ている人も楽しくない」という考えで仕事をしていましたね。
業界の逸話をブレンドし、キャラクターを作り上げた小説
ところが、体重がみるみる増えて、危険領域に達してドクターストップとなったときに、プロデューサー職をいったん離れて、アナウンス部に部長として配属されたんです。そのときに、目の当たりにした「アナウンサーたちの生き方」が面白すぎて、今回、小説として『全力でアナウンサーしています。』を書かせていただきました。誰も食べたことがない珍味のような小説ができたとは思うんですが……。
永井 噛めば噛むほど、味わい深かったです。
吉川 キー局の看板アナウンサーたちを「引きずり降ろそう」とするテレビ局の「闇」の勢力がありまして、それに対して戦う人たちを描いた話です。
長野 私は、登場人物があまりにも濃くてびっくりしました。ありえない話の連続で、どこかにモデルがいるのかな、って。フジにはこんな人いなかったですが、日テレにはいたのかしら?
吉川 直接のモデルはいないんです。小説を書こうとおもったときに、7人のテレビ局のアナウンサー経験者に取材したり、自分が見たことを交えたり、この業界にあった逸話を、いくつもブレンドして、キャラクターを作り上げていったんです。