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 貨幣が世の中にあふれると、どうしても魅力は落ちてしまいます。価格とは貨幣と個々のモノ・サービスとの交換比率ですから、貨幣の魅力が落ちると、交換できるモノ・サービスが目減りする。これを逆からみるとモノ・サービスの価格、すなわち物価が上がるということなのです。

小まめな節約を

 貨幣があふれているとインフレを引き起こすという点は、後ほど改めて触れることにして、シナリオの検討へ話を戻しましょう。

 なぜ物価高は落ち着くとみているのか。それは消費者に「逃げ道」があるからです。たとえばガソリン代が上がっているので週末のドライブを控える。こうした小幅な需要減も、積み重なれば大きなインパクトになります。車を使わざるをえない地域であれば、ガソリン以外の商品の購入を少しずつ減らす。

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 またPOSデータを分析したところ、パンやパスタなどの小麦製品が値上がりしているので、米食に切り替える動きが見えます。

 また、同じパンやパスタであっても、値上げされた商品を避ける購買行動も目につきます。これまで選んでいたナショナルブランドの商品の購入を減らし、スーパーのプライベートブランド(PB)のような比較的、安い商品を買っている。

 当然ながら、こうした消費者の購買行動には小売店側も敏感です。値上げの報道が相ついだ3月末、流通大手イオンの店舗に、こんなポスターが貼られました。

「今こそ企業努力が必要な時と考えます。トップバリュは、食料品・日用品 約5000品目の価格を本年6月30日まで値上げしません」

トップバリュの値段据え置きを発表したイオン ©iStock.com

 昨年からPB「トップバリュ」の価格を値上げせずに据え置きしていたが、その期間を延長するというのです。やはり大手の西友も同じように発表しています。

 食品値上げのニュースが相次いでいるわりに、食品という品目全体で値上げ傾向が見られないのは、こうした消費者の購買行動が、値上げの波及を防いでいるからです。

 ガソリンや電気・ガスなどのエネルギー関連は、代替することが容易ではないので節約に努める。食品では価格の安いものを選ぶ。こうした小まめな生活防衛術が積み重なることによって、一部の商品の値上がりを、かなりの程度、相殺できるのです。79年の第2次オイルショックでも、石油の国際価格が2倍に引き上げられましたが、このときも小まめな節約の結果、日本はそれを乗り切っています。