世界的に見ても日本のフェルメール人気は特に高く、今も「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が全国巡回中だ(東京は閉幕。北海道、大阪、宮城を巡回予定)。
『怖い絵』著者がフェルメールの“解像度”を上げる
フェルメールが生きた17世紀オランダは王のいない連邦共和国で、近世ヨーロッパにおいてかなり特異な“庶民が主役”状態だった。黄金時代と呼ばれる100年間には2000人の画家がいて、熱気あふれる時代に絵筆を走らせていた。
数々の絵画を見ながらこの時代の面白さを解き明かす一冊が『フェルメールとオランダ黄金時代』だ。ドイツ文学者で『怖い絵』著者の中野京子さんが、フェルメール、レンブラント、ハルスらオランダ人画家の作品のほか、戦争相手国スペインでベラスケスが描いた絵など40点の名画を読み解き、歴史への“解像度”を上げてくれる。刊行を記念して、本書の一篇「女性たち」を全文公開する。
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ニューヨークのハーレムはアフリカ系アメリカ人が多く住む地区だが、かつてはオランダ移民の居住区だった。彼らが故国の町ハールレム(Haarlem)の名を付け、やがてハーレム(Harlem)と表記されるようになった。
元祖ハールレムはアムステルダムに近く、今もチューリップ栽培が盛んな豊かな町だ。ここで活躍したフランス・ハルス(1581/85頃~1666)は、最晩年の80歳の時、最後の集団肖像画『ハールレム養老院の女性理事たち』を描いた。この養老院の建物が現在のハルス美術館になっている。