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「彼らは幼少期から今までずっと、自分の命を支える存在」
村田 私は、彼らのことは大人に言ったら踏みにじられると思って隠していました。彼らは私の命を支えていて、もし口に出して誰かに否定されたら私は死んでしまう状況だったので……今もそうなのですが。
大人になって、朝吹真理子さんと彼らの話をしたことがあるのですが、話せたことがとても嬉しかったです。朝吹さんと、「イマジナリー」って言葉自体が本当は辛いよね、イマフレ、とか何か違う呼び名があるといいよねとお話ししていました。
彼らは幼少期から今までずっと、自分の命を支える存在です。Aさんのほかに30人ほどいます。彼らがいなかったら、きっと死んでしまうと今も思います。仮に彼らのことを話して、「空想的で素敵ですね」などと言われたら心が壊れてしまって、たぶん自動的に死亡するのだと思います。とても危険なので、あまり文章にしたことはありませんでした。
このエッセイは、最初は日本語版を出す予定がなかったので、英語でなら不安定にならないかなと執筆を決めました。
――一般的には「現実」こそが真実で価値のあるものとされているけれど、そうでない存在が村田さんの中で同じ重さで存在しているのだなと思います。
村田 私は、現実より、みんなが架空と呼んでいる世界の人たちのほうが重要という人生を歩んできたのかなと思います。それはこのエッセイを書いて気づいたことでもあります。
(撮影:佐藤亘/文藝春秋)