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野生に生きるという想像が深層心理の根底にあるのかも(笑)
村田 実はあまり関係がないんです。「生存」は「Granta」の元編集長だったジョン・フリーマンさんからの依頼を受けて、「地球温暖化と社会的な不平等の相互関係」というテーマで書いた小説です。「土脉潤起」は「歳時記」をテーマに書いたもの。同じモチーフが登場することは、本になるまで気づきませんでした。二度も書いているということは、よっぽど、もっと動物だった頃の人間とか、野生に生きるという想像が深層心理の根底にあるのかもしれないですね(笑)。
――「生存」は生存率を数値化するという悪夢のような、でももしかしたらあり得てしまうかもという設定です。
村田 小説を書きながら、数字で表さないだけで、本当は私たちに「生存率」はあるんじゃないかと感じていました。どんな教育を受けたとか、毎日の食事の内容だとか、住んでいる場所が温暖化の影響で危険になる可能性があるかとか、その人がどんな検査や医療を受けられるか。いろいろな要素から、その人の命のリスクが違っているという感覚が、ニュースで見たときよりも、実際にその数値を突きつけられながら生きている主人公たちを書いていると生々しく感じられました。
テーマをいただくまではここまで突き詰めて考えていなかったけれど、書くことでより一層切実で残酷な問題として考えるようになりました。