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「お姉ちゃんの『現実』って、ほとんどカルトだよね」
村田 昔、地球は平面だと信じている男の人が、それを証明するために自作ロケットで飛んでいったというニュースを読んだんです。そのとき、自分は地球は丸いと教えられてきたから信じているのであって、「地球は平面で端っこは氷の壁だ」と言われて育ったら、私もそれを信じていたかもしれない、と思いました。そのイメージもあって「天動説セラピー」を書いたのかもしれないです。
私は登場人物がどうなるのか、何を言うのか、いつも決めないで書くのですが、妹が「お姉ちゃんの『現実』って、ほとんどカルトだよね」と言ったとき、彼女の「自分の信じた世界を生きたい」という祈りのようなものが、とても切実に感じられて。この一文から物語全体が広がりました。
斉川さんは誰よりも「信仰」を大切にしている人で、妹は自分の世界を信じたいという気持ちがある人。主人公の永岡も、ある種の信仰心で、彼女が「現実」と呼んでいる世界を熱心に布教しようとしています。それぞれの切実さがあると思うのですが、なぜかところどころの描写がコミカルになってしまって……(笑)。私自身は、彼女たちそれぞれに愛しさのようなものを感じていました。
動物だったころの人間が気になる
生存率とは、65歳のときに生きている可能性がどれくらいか、数値で表したものだ。今の時代、お金さえ払えば大抵の病気は子供の頃に治せてしまうので、生存率は本人が得るであろう収入の程度の予測とほぼ比例している。
――「生存」とその次の「土脉潤起」はどちらも「野人」になる/なった女性が登場します。これらはひと続きの物語なのでしょうか?