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――ご自身がたくさん悩んできたからこそ、いい距離感でお子さんと接することができているんですね。

グラハム子 そうだとうれしいですね。ただ、「価値観の押し付けをしていないかどうか」にとらわれすぎて悩むことも多いです。うちの子たち、“自分のやりたいこと”をあんまり言わなくて。それで今は、私や夫が希望した習い事をしてもらっているんですけど、「これも価値観の押し付けなんじゃないか、本当は嫌なんじゃないか」と悩みます。

 でも、これも“白黒”じゃなくて“グレーゾーン”で考えるといいのかなって。子どもに親の希望を伝えることも、きっとすべてが悪いことではないんですよね。親の希望で子どもをがんじがらめにするのは悪いのかもしれないけど、ちょっと背中を押してあげるのはいいはず。ただその線引きが難しいので、日々悩んでいるんですけど(笑)。

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「大人だって完璧じゃない。葛藤しながら前に進んでいるんだよ」というのを子どもたちに伝えられるといいのかもしれませんね。

©深野未季/文藝春秋

グラハム子さんが考える母親の“あり方”

――ありがとうございます。最後に、親は子どもにとってどんな存在であるべきだと考えていますか?

グラハム子 親は、子どもにとっての最重要人物なんです。特に、小さい子にとっては親が世界のすべてだから、親の表情や言動に一喜一憂しちゃう。

 小さい頃、母から「一重でかわいそう」「勉強ができなくて恥ずかしい」と言われるたびに、「私では母を満足させられないんだろうな。もっと可愛くて優秀な子がほしかったんだろうな」と落ち込んでいました。本当は、二重じゃなくても、勉強が得意じゃなくても、運動神経が良くなくても、「“あなた”がいいの。“あなた”が大事なの」って母に言ってほしかった。

 だから私は、子どもたちが「お母さんだけは、どんな自分でも愛してくれる」と感じられるような母でありたいなと思っています。

©深野未季/文藝春秋 
 

写真=深野未季/文藝春秋