ボクシングだけで注目してもらいたいという気持ちがすごくある
阿川 カッコイ~イ♥ これはどれだけご自身で自覚があるか分かりませんけれども、私みたいなボクシングに詳しくない人間でも見入ってしまうくらい、美しい試合をなさっていて、同じように感じている人は世間にいっぱいいると思うんですよ。
井上 ありがたいです。僕自身、挑発するとか、そういうパフォーマンスではなく、ボクシングだけで注目してもらいたいという気持ちがすごくあるので、時間はかかりましたけど、ようやくそれに近づいているのかなという感触があります。
阿川 井上選手の場合、早く倒しすぎて、本当は強い相手と戦っているのに、相手が弱いんじゃないかと思われることもあるんじゃないですか?
井上 そうなんですよ。それが歯がゆい時期もありました。ただ、WBSSというトーナメントは強い人間だけを集めて行われているので、説明が必要ないというのも大きいですよね。
阿川 今後、どういう風にボクシング界を盛り上げていきたいですか?
井上 もちろん、これまでボクシングに興味のなかった女性や、同世代の若者に試合を観てもらいたいというのがあって、いまの状況を時代のせいにしたくないんですよね。
阿川 時代のせい?
井上 それこそ、昭和の時代や、辰吉(丈一郎)さんの時代は、爆発的にボクシングが盛り上がって、ジムに入会する人も増えたと聞いています。現状のボクシング熱はそこまでではないでしょうが、それを時代のせいにするのではなく、自分が令和の時代にボクシングの魅力を示していきたいなと。
阿川 ヒューヒュー! 弟の拓真さんも同じ階級の暫定王者ですが、お兄ちゃんにこれだけスポットライトが当たると、ちょっとスネたりしませんか?(笑)
井上 弟は弟なりに色んな思いはあるでしょうけれど、僕を超える練習をしているとはまだ思ってないんですね(笑)。でもこちらも弟に負けられないという気持ちがあるから頑張れるところもあります。
阿川 現在のところ、3階級で世界チャンピオンになってますけれど、今後階級に関しては?
井上 バンタムが適正階級だとは思いますが、もう1つ上でもやっていけるかなと思っていて、来年は上げてもいいのかなと。
阿川 じゃあ、スーパーバンタム級に。その次は?
井上 フェザー級に上げるとなると、筋力をもっとつけないと通用しないでしょうから、まだ現実的には考えられないですけど、最終目標はフェザー級になると思います。
一筆御礼
もうね、アガワは完璧にダウンでございます。正直なところ、今までボクシングというものは、鼻血は出るわ目は腫れるわ顔はひん曲がるわの光景ばかりが目に焼きついて、スポーツというより他人様の喧嘩を見ているようで、率先して観戦する気にならなかったのですが、このたび井上選手の過去の試合の映像を見まくりましたら、まあなんと上品で、圧倒的な強さであられることか。そしてお目にかかってみれば、さらにその思いが強くなるばかり。傷一つないすべすべとした肌、優しくも愛らしい笑顔、鋭い瞳、謙虚でわかりやすい言葉の数々。対談の途中、愛の告白のごとき台詞が出かかるのを何度、押しとどめたでしょう。「本当に強い人はみんな紳士ですよ」とはまさに井上さんご自身のことです。アガワ、興奮しております。血圧上がっております。おかげさまでボクシングの見方がまったく変わりました。決勝戦までどうかお健やかに! シュッシュー!
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