1976年(66分)/東映/3080円(税込)

 講演や取材で地方に出張する機会が多い。枕が変わると眠りにくくなるのだが、最近は気にならなくなった。

 というのも、大抵のビジネスホテルはWi-Fiが繋がっているため、眠くなるまで動画をいろいろと観ながら時間を潰すことができるからだ。幸い、折に触れて本連載で述べているように、珍しい映画も次々と配信されており、そうした際の選択肢には事欠かない。あまり観たことのない作品を気分に任せて選んでいくと、殺風景な部屋にあってもオールナイト上映の劇場にいるような気がしてきて楽しい。

 今回取り上げる『くの一忍法 観音開き』も、つい最近の出張の際に配信で観た。甲賀の取材をしていたため、それならせっかくなので忍者映画を――と思い立ったのだ。

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 東映の低予算ポルノだが、なかなかに見応えのある時代劇映画になっている。

 信州から江戸に御用金三万両を運ぶ真田藩の一行が上州碓氷峠で何者かに襲われ、三万両が消えた。伊賀忍者を差配する服部半蔵(名和宏)は三人の女忍者を探索に派遣する。そして、彼女たちは秘術を駆使して真相に迫っていく。

 基本的にはポルノであるため、さまざまにエロティックな忍術が繰り広げられるのだが、それ以上に際立っているのが脇の男優陣だった。

 汐路章、岩尾正隆、成瀬正孝、福本清三といった七〇年代のヤクザ映画で鳴らした強面の俳優陣が躍動、強敵として彼女たちの前に立ちはだかるのだ。特に魅力的なのが成瀬。長髪で盲目の忍者として登場、クールな凄腕ぶりを見せ、ヤクザ映画でのギラギラしたチンピラ役とは異なるニヒルさをもって魅了してくる。

 その一方で、彼女たちを助ける真田忍者を演じるのが岡崎二朗。これがとんでもなくハンサムで、その逞しくも優しげな眼差しもあいまって、ヒロイックに映し出されていた。さらに、岡崎と女忍者の逃避行をロングショットで捉えた雪山のロケーションは、絶景とも言えるほどの美しさ。

 この岡崎のカッコ良さと、雪景色とが重なり、許されぬ恋情に苦悩する男女による甘くも哀切なムードのラブストーリーが、物語中盤を彩ることになっていった。

 これに加えて、間寛平によるコントじみたユルユルな寸劇も物語展開に関係なく挿入されたかと思いきや、岩山での岡崎と汐路たちの激闘は緊迫感にあふれて迫力満点。一時間強と思えないほど、盛りだくさんの内容になっている。

 さらに最後には、思わぬどんでん返しが待ち受けており、低予算とは思えない贅沢さだ。

 パソコン一台あれば、眠れぬ夜も充実した時間が過ごせる。なんとも便利な時代だ。

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