アメリカ軍におけるパイロット候補生たちの訓練と活躍の様を描いた『トップガン』の続編、『トップガン マーヴェリック』が大ヒット中だ。
筆者にとって一作目は映画を好きになり始めた頃の作品でもあり、今度の続編ではIMAXの大スクリーンに繰り広げられる航空アクションの迫力や、三十六年経っても変わることないトム・クルーズのカッコよさに興奮。童心に返ったような楽しさに浸れた。
日本でも、かつて『トップガン』のような映画が作られたことがある。――と書くと、航空自衛隊に舞台を変えて、ほぼそのままの設定で作られた『BEST(ベスト) GUY(ガイ)』を思い浮かべる方も多いとは思う。が、『トップガン』より遥か前、一九六四年にも作られていた。
それが、今回取り上げる『今日もわれ大空にあり』。
航空自衛隊浜松基地を舞台に、教官と訓練生たちの物語が展開される。脚本は須崎勝彌。自身も特攻隊の生き残りで、『太平洋奇跡の作戦 キスカ』『連合艦隊』といった反戦メッセージを込めた悲劇性と戦闘アクションの娯楽性を見事に合わせた戦争映画の傑作を数多く送り出してきた男が書いているだけあって、そのドラマは実に熱い。
そして本作の最大の魅力は、自衛隊の全面協力による実機を使ったダイナミックな映像にある。冒頭から、編隊を組んだF‐86が富士山の実景をバックにダイナミックな飛行を披露。その後の訓練シーンも含めてさすが東宝といえる映像で、特撮パートでの役者たちの芝居も実機の動きに違和感なく挟まり、スピーディな編集とあいまって、そのスペクタクルに圧倒された。
教官役を演じる三橋達也の制服姿がとにかく凜々しいのを筆頭に、司令役の藤田進の人情深い朴訥さ、若きパイロット役の佐藤允の豪傑ぶりや夏木陽介の爽やかさ、先輩パイロット役の平田昭彦のクレイジーさ、整備士役の中丸忠雄のクールさ――。東宝の戦争映画でお馴染みの俳優陣も存分に個々の魅力を発揮。これが実際の基地で撮られたロケーションと合わさり、空に生きる男たちの逞しさをリアリティたっぷりに見せてくる。
しかも、ただカッコいいだけの描かれ方はしていない。
「パイロットは技術だけが全てではない。空を舐めてはいかん。もっと謙虚になれ」
「いつかは思い知らされる時が来る。空だ。空にだよ」
こうした、自身が飛行機乗りとして死線を潜り抜けた須崎だからこその、空への畏敬の念を込めたセリフの数々がドラマを引き締め、勇ましさ一辺倒に向かわせないのだ。
『トップガン』に見劣りしない和製の大航空映画、このタイミングで堪能してほしい。