ストリップを愛しながらも、同時に“後ろめたい”
ストリップをこよなく愛するガンジイだが、そのことは家族は勿論のこと友人たちにも話していない。
「ストリップのイメージは社会的に悪いでしょう。俺の年代は、ストリップと聞いただけで、見もしないで下品だっていう世代だからね。左翼運動の人たちは特にね。俺自身も内緒で通い続けることに罪悪感も感じているんだよ。もし通っていることがさ、他の人にバレたりしたら、俺のイメージも落としてしまうもの。一応、町内会に参加したり、精神病患者の自助グループでボランティアをやったり社会貢献活動もやっているんだけど、そうした行いがストリップ通いで全部パーになっちゃうでしょう。誰も相手にしてくれなくなっちゃうよ。信用を失いたくないから、ひとりでこっそり見にくる。2000円で爺さんがこんなに楽しめる場所はないけど、口が裂けてもさ、親友といえる仲間にもストリップに通っていることなんて言えないよ」
ストリップを心の底から楽しみ、命を救われたと言っても、黄金劇場へ通うことに後ろめたさを感じ、罪だとさえ言ったガンジイ。複雑な胸の内を吐露した言葉を聞いて、何とも言えない気持ちになる。その言葉には一筋縄ではいかない人間の真情が現れている。もう少しつきつめて考えてみれば、後ろめたさを感じ、誰にも秘密にしながらストリップに通うからこそ、窮屈な日常から心を解放し、快楽に浸れるのかもしれないなと思った。
考えてみれば、風俗にしろストリップにしろ、悪所と呼ばれるところに通う人というのは、その依存度の軽重はさておき、日常から離れることを求めているのだから、公言する人などほとんどいない。
ストリップ劇場というものは、清い日常だけでは心が満たされることのない人間が社会の中で生きていくうえでの潤滑油のような役割を果たしているのではないか。そんなことがガンジイの発言から窺えたのだった。
取材を終えると、ガンジイは、絶対に住んでいる場所を書かないでくれよと念押しした。当然ながら私はどこに彼が住んでいるか書かないが、そこまで心配なら取材を受けなければいいのだが、やはり心に積もったストリップに対する誰にも言えない思いを吐き出したかったのだろう。