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ジャグジー有り&台所無しの「駅徒歩20分、家賃3万5000円」

 コロナが上陸する前は、円安によるインバウンド需要を背景に「民泊」が流行りだった。住家を宿屋に変えるというのはごく簡単なことで、必要なものは同じわけだから、特にリフォームを行わず貸し出している例も多かった。

 住む人が減って旅行客が増えるのなら、マンションを民泊に変えてしまえばいい(本当はそう単純ではないが)。逆に、ホテルのお客さんが減った場合、元ホテルの物件が居住用にリフォームされることもある。

 そういうわけで、日本には「元ホテル」のアパートやマンションがいくつか存在するが、ビジネスホテルが存在しないような田舎町や郊外にも、ホテルはある。「ご休憩」目的での利用も可能な、いわゆるラブホテルだ。

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 最近は都会を中心に、ゴージャスでラグジュアリーなラブホテルや、特殊な内装を持ったラブホテルが好評を博しているが、ラブホテルというのは本来、“単一の目的”を達成するためのシンプルな施設である。そんなシンプルな田舎のラブホテルが居住用に改装されると、間取り図はこうなる。

 

 長屋のように並んだ元ラブホテルの一室で、駅徒歩20分、家賃は3万5000円。1階がまるごと駐車場というのが面白く、アメリカに多い「モーテル」を思わせる間取りである。都会の標準的なラブホテルと比べれば余裕のある空間で、ワンルームとしても広い部類に入るが、台所がないのには困りそうだ。

台所はないがジャグジーは完備 ©iStock.com

 浴用設備に関しては、ラブホテル時代のものがそのまま使われており、ジャグジーもある模様。ただし掲載されていた写真からは、浴槽が怪しく光るかはわからない。外装は派手なままで、「元ラブホ」の趣を強く残している。

 さて、ラブホテルはふつう二人で泊まるものだが、間取り図に直してみると、どう見ても「単身者向け」の部屋だとわかる。幾多のカップルが愛を紡いできた空間にひとりで暮らすことになるわけだが、寂しさを感じはしないのだろうか。他人事だが、36歳独身男性の筆者としては、いささか心配になってしまう。

 こういう変わった建物には、変わった役割を与えてみたくなる。この物件を、住む以外で利用するとしたらどんな使い方があるだろう。

 広いガレージを生かして“趣味の隠れ家”にするというのは夢のあるプランだ。アトリエもいいし、プライベートシアターにもできる。巨大なジオラマを保管したり、模型飛行機のメンテナンスに使ったりと、用途は幅広いだろう。

 逆に、元がラブホテルで家賃が安いからといって「愛人を住まわせる」というような発想は最悪の部類だ。この間取りでは早々と愛想をつかされるのが関の山である。

 リフォームによって形を変えることで、建物の“由緒”があらわになる特殊物件の数々。そういった場所での生活を妄想するのは、やはり面白い。