2000年代の「IZAKAYAブーム」と2010年代の「第3次日本食ブーム」
2000年代後半になると日本酒が人気となって、IZAKAYAブームが広がった。日本の居酒屋チェーンが進出し、韓国に輸入された日本酒の銘柄は100を超えた。
その中でもとくに、「がんばれ父ちゃん」が人気を博す。新潟の中堅酒造メーカーが主に韓国向けに製造している日本酒で、他メーカーの720ミリリットルの純米酒が5万ウォン台で提供されるなか、900ミリリットルで1万ウォン台という値段の安さに加えて、日本語を学んだことがある人なら読んで意味を理解できる名称も広がった要因だろう。
2011年3月、東日本大震災に伴う福島原発の事故が起きると、「日本食は放射能に汚染されている」という風評被害が広まった。そのあおりを受けて日本料理店は次々に閉店に追い込まれ、IZAYAKAブームは終焉を迎えた。
だが、2014年頃から訪日韓国人が急増すると、日本の味を知る若者が増えてきた。加えて、「深夜食堂」や「孤独のグルメ」「ワカコ酒」など、食をテーマにした日本のドラマの放映がはじまった。こうして、第3次日本食ブームが到来する。
第1次日本食ブームは正統日式、第2次日本食ブームは日本酒とIZAKAYAが中心だったが、第3次ブームは丼やトンカツ、ハンバーグなど家庭料理が中心で、訪日観光で本場の味に接した人たちが牽引している。
不買運動でも出前で注文…「韓国風日本料理」の行方
2019年下期、日本製品不買運動が広がると、日本料理店に出入りする姿を見られたくない人たちが、日本料理を出前で注文し、韓国の食品会社は、家庭で食べられる日式料理の製造販売を開始した。
この数年、日式料理を好んだ層は高齢化し、訪日観光で日本の味を楽しんだ若い層が日本料理を牽引するといった世代交代が進むかに見えた。しかし、コロナ禍も手伝い、現在は韓国食品会社の日式料理がよく売れているようだ。日本にはない日式と本場の日本料理の二分化は、しばらく続くのだろう。
(筆者撮影)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。