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〈懲役7年の判決〉温厚だった“犯罪心理学者”の夫は6枚の“犯行計画メモ”を用意し、妻に包丁を突き立てた

 2020年3月、犯罪心理学が専門で文教大学准教授(当時)だった浅野正被告(53)が妻(当時53)を包丁で刺殺した事件。さいたま地裁は6月22日、浅野被告に懲役7年の判決を言い渡した。被告は妻が自分を殺害しようとしているとの妄想にとりつかれており、心神耗弱状態にあったが、無罪となる心神喪失状態にはあたらないと判断した。

「埼玉犯罪被害者援助センター」の理事を務め、ゼミ生徒からも「温厚」と言われていたはずの浅野被告。一体何があったのか。犯行計画や妻・法代さんとの関係を報じた「週刊文春」の記事を再公開する。(初出:週刊文春 2020年4月2日掲載 年齢・肩書き等は公開時のまま)

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 3月16日夕刻、さいたま地裁前のバス停。黒いジャンパーに白いマスク姿の痩せた男が、一人の女性をジッと待ち伏せしていた。

「ヤーーッ!」

 女性の短い悲鳴が辺りに響くと、男は仰向けの女性に馬乗りになり、胸部に包丁を突き立てた――。

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 殺人で逮捕されたのは文教大学准教授で犯罪心理学が専門の浅野正容疑者。被害者は妻で、さいたま少年鑑別所に勤務する法代さんだった。

「5時半に退勤後、鑑別所の敷地内の宿舎から自転車で出かけるところだった。浅野にいきなり引き倒され、防御創はなし。刺創は2カ所で、胸内の失血が死因です」(大手紙記者)

犯行現場には供花が

 事件時、浅野が所持していたリュックには、6枚の“メモ”が残されていた。

「『首を刺す』という犯行計画や、法代さんの行動パターンが書かれ、犯行に使用する道具も列記されていた。押収した交通系ICカードから、何度も現場を訪れ、綿密に下見したと見られています」(同前)

温厚で人気の講師だった浅野容疑者

 岐阜県出身の浅野は県立岐阜高を卒業後、一橋大社会学部に進んだ。横浜国立大大学院で心理学を学び、95年、国家公務員一種の心理職に合格。少年鑑別所や刑務所で勤務する中、法代さんと出会い、結婚した。

 07年より文教大学臨床心理学科の専任講師に。

「現場を知る元公務員の教員として、ゼミは警察官や公務員の専門職を目指す学生に人気でした」(大学広報)

浅野容疑者

 浅野は08年から「埼玉犯罪被害者援助センター」の理事を務め、相談員の指導も行っていた。大学のゼミの学生が人柄を語る。

「温厚で、寝ている学生がいても『眠いよね』と怒らなかった。就職の相談にも親身に乗り、援助センターの被害者相談の現場を学生に見せたりしていました」