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「主人が帰ってこない」…2年で3人が自殺 長野“職員100人の町”で何が起きているのか

「2年足らずの間に、職員が3人も自ら命を絶ってしまった」(役場の中堅職員)

 長野県上高井郡小布施(おぶせ)町。長野市の北東15キロほどに位置する同町は、面積が19平方キロメートルと県内で最も小さな自治体であり、人口は1万人余り。その町の、職員がたった100人しかいない役場内で自殺者が相次いでいた――。

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責任感が強く出世頭だったA氏

小布施町役場

 同町は栗菓子と、葛飾北斎が晩年に創作を行った地であることで知られ、中心部には古い日本家屋の風情を残した建築物が並ぶ。

 その町の静寂が最初に破られたのは2年前、2020年5月1日のこと。

「主人が帰ってこない」

 早朝、産業振興課長A氏(51・以下、年齢はいずれも死亡当時)の妻から連絡を受け職員が見に行くと、役場の屋上へ上る梯子に吊り下がるA氏の姿があった。冒頭の中堅職員が語る。

「Aさんは役場では出世頭で、通常は50代で昇格する最上位の課長職に、40代前半で就いた。公務員の見本のように一歩引いて控えめな感じだが、明るく、責任感が強い人でした」

 前年7月に産業振興課長に異動。同課は19年10月の台風19号による千曲川の氾濫で、畑に流れ込んだ土砂の排土対応に追われていた。コロナ禍の商店等への対応も担っていたという。ベテラン職員が語る。

「亡くなる3カ月ほど前に酒席を共にしましたが、Aさんが酒を飲まない。『ちょっと体調が悪くて』、新しい課での仕事に『きついですね……』と漏らしていた。以前は『自分は町長に気に入られている』と照れ臭そうに話し、町長の家にも招かれていたのですが」