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「主人が帰ってこない」…2年で3人が自殺 長野“職員100人の町”で何が起きているのか

「主人が帰ってこない」…2年で3人が自殺 長野“職員100人の町”で何が起きているのか

町民の人気は高かった前町長。だが、役場内では…

 A氏が「気に入られていた」という市村良三前町長(73)。町内の老舗栗菓子店「小布施堂」の一族で、慶大卒業後、ソニー勤務を経て05年、町長に就任。以後、21年1月まで4期16年務め、観光庁の「観光カリスマ」にも選定された。

市村前町長(「町報おぶせ」より)

「民間出身らしく外向けのPRに熱心な人。要望をなんでもよく聞くので町民の人気も高かった」(同前)

 だが、役場内では別の顔も見せていた。

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「『俺は何もできない人間だから』が口癖で、住民から引き受けた仕事は職員に丸投げ。不文律だった年功序列を壊し、気に入った若手を登用するが、期待に応えられないと『何やってるんだ!』と住民の前で叱責することがあった」(同前)

 実は、A氏が亡くなる前日の朝にも伏線はあった。

「農家から『早くしろ』と求められている排土作業について、市村町長(当時)が管理職会で『他の課とも協力するけど、Aさんでお願いします』と半ば押し付けていた。数人分もの仕事を背負わされ、寝ずに仕事をしても先が見えない状態だったと思います」(同前)

 この約1カ月前に役場内で行われた人事も影響を与えたとみられている。

「市村町長の一本釣りで、東大卒の30代を総務課長として新任採用。人事や財務を司る要のポジションで、Aさんが有力視されていた。実務能力が求められるポストで、行政未経験の若者が抜擢される様子に絶望したのでは」(同前)