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 事実上唯一の玄関口ではあるものの、来居港には本当に何もない。正確に言えば2階建ての小さなターミナル、ガソリンスタンド、遊漁船の船宿が見えるだけ。タクシーは1台だけあるが、村民が診療所や買い物に使う足になっており、終日のチャーターは難しい。それでもレンタカーは軽自動車が数台あるという。

来居港ターミナル内
ガソリンスタンドとターミナルしかない玄関口

80年代の歌謡曲が流れる村営バスに乗って中心部へ

 ターミナル1階の観光協会で尋ねると、中心部の大江地区まで村営バスが出ていると案内された。100円を払って「村営バス」という名のワゴン車に乗る。なぜか運転手がスマホで80年代の歌謡曲を流す中、会話のない車内に5分ほど耐え、「繁華街」とされる郡地区で下車した。

「村営バス」という名のワゴン車
湾の奥まった場所にあるのが、繁華街の大江地区だ

 だが「繁華街」といっても歩いている人は誰もいない。小学校と中学校が一緒になった校舎は、村営図書館が同居する。校庭で運動する子供たちの元気な声だけが集落に響いている。

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島内随一の繁華街・大江地区は静かだった

 小川を覗くと小さなフグが群れをなして泳いでいた。車もほとんど行き来しない。近くに1軒だけ新しい商店があった。

商店のある目抜き通り
小川にはフグが群れていた

 様子を見ると70代ぐらいの男性が出てきた。買い物袋に弁当を下げている。顔を見るとマスクをしていない。確かに「ノーマスクの島」は本当のようだ。

マスクのない日常
民家に同化した商店

 店に入ると、顔を見合わせた店員のお兄さんに「すみません、手を消毒してもらっていいですか」とやんわり諭された。明らかに見ない顔=よそ者の筆者に警戒している。商店には各種菓子パンが並び、コンビニと遜色のない品揃えに加えて野菜や果物も陳列してある。冷凍になるが精肉もたくさんあった。