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 1999年に日光東照宮が世界遺産に登録されたことで、いったんは観光客の減少には歯止めがかかったかにみえたものの、2011年に発生した東日本大震災の影響で国内外からの観光客が激減し、鬼怒川温泉は再び大きな打撃を受けることになる。

 しかし、ここで彼らは諦めなかった。その後、地域再生事業を活用して駅前広場を新しくしたり、地域のサービス向上のために従業員向けの講習会を開催したりしながら、鬼怒川温泉はどん底から再び観光客を少しずつ増やしていったのである。同じく日光市役所観光経済部の藤原観光課・細井正史課長は次のように語る。

日光市役所
 

「訪日客が増えたことも後押しになりました。平成19年の訪日客の宿泊客数は8万人でしたが、令和元年には12万人まで増加しました」

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 バブルの崩壊、東日本大震災と大きな苦難を乗り越え、這い上がろうとしていた鬼怒川温泉。しかし、2020年、それまで以上の苦難がやってくる。コロナ禍だ。

 新型コロナウイルスによって訪日客の客足は急落。2020年には85%減の1万8000人、2021年には2000人となり、バブル崩壊や東日本大震災とは比べ物にならないほどの観光客の減少幅となった。細井課長は嘆息して言った。

「県民割やGoTo、訪日客の回復には大いに期待しています。だからこそ、観光業の回復に水を差すようなネット上の廃墟群の写真や情報は、鬼怒川温泉にとって大きなマイナス要素でしかないんです」

鬼怒川温泉の街並み。大型のホテルも立ち並び、街全体に活気もある

「なんで鬼怒川ばかりが…」

 取材を続けていると、立ち寄った飲食店で店の主人が愚痴をこぼした。

「他の温泉地にも廃墟になったホテルがたくさんあるんだよ。それなのに、鬼怒川ばかりがネットやテレビに取り上げられてさ」

 主人によると、団体客がピークに達していた時代は、街を練り歩く人が浴衣をはぎとられるほど土産屋の客引きが多く、夏に行われる「龍王祭」では、多くの観光客が訪れて街中が大いに賑わっていたという。

かつての鬼怒川温泉の写真。お祭りの様子
 

 しかし、そのピーク時の全盛期があったからこそ、鬼怒川温泉の廃墟は“バブルの遺構”として注目されてしまうところがあった。光と影の部分がクローズアップされてしまうのは日本を代表する有名温泉地としての宿命とも言えた。