Q 進む円安でも下がらない金利…金利が上がるとどうなるの?

 生活をしていても日に日に実感するくらい、記憶にないペースで物価が上がっています。ニュースを見ていると「低金利を背景にした円安が原因で……」などと解説されていることも多いような気がするのですが、ではなぜ、金利を上げるという選択をしないのでしょうか。長らく金利が低い時代でしか生活していないので、素朴に金利が上がるとどうなるのかイメージがつきません。教えてください。(30代・女性・会社員)

黒田東彦 日本銀行総裁 ©️文藝春秋

A 金利を低くすると企業は銀行から資金を借りやすくなりますから…

 景気が悪いと、中央銀行が金利を引き下げ、景気回復をめざす。これが経済の世界の常識になっているため、景気がよくならない日本は、金利が低いままなのです。

 金利を低くすると、企業は銀行から資金を借りやすくなるため、新たに工場を建てたり、従業員を雇ったりします。工場の建設にはたくさんの建設資材が必要になりますから、関連の会社が儲かります。従業員を新たに雇う動きが広がれば、失業率が下がります。

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©️iStock.com

 一方、金利を上げると、企業が銀行からお金を借りにくくなり、経済活動が止まってしまう恐れがあります。あなたが銀行に預金すると、これまでより利子が増えて得をしますが、住宅ローンを借りようとする人にとっては、金利が上がればローンを借りることに消極的になってしまい、住宅建設に必要な資材が売れなくなってしまいます。

 景気対策のためには低金利を続けなければなりませんが、低金利だと円安が進み、輸入品の値段が上がってしまい、これまた景気回復にはマイナスになる。これが日銀の、そして日本のジレンマなのです。