昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

トリビアルな視線で「青皿の大根おろしの雪景色」

ウイッキー いやいや、それではじめて大根足という日本語を知ったんですが、以来大根というとどうしても脚が思い浮かぶ。

ビナード 妖しい大根足の句だとしたら相当すけべ。ぼくは干してある大根なのか、畑の大根なのか、判断し兼ねて取らなかった。

金子 私もそこがわかりにくくて取らなかった。ただこういうバタ臭い感覚がヨーロッパ的に思えてユニークです。日本人じゃなかなかこういう発想にならないんじゃないか。では、もう1つの4点句「青皿の大根おろしの雪景色」。ゾペティさん。

デビット・ゾペティ(小説家・スイス代表)

ゾペティ 大根という冬の季語から雪景色を連想させ、青い皿に大根おろしが映えている、という重なり合うイメージがぴったりで、すばらしい句です。

金子 絶賛だね。フランクルさんはどうですか。

ピーター 青皿と青空の音が近いでしょう。だから青空に映る雪までも想像できて趣のある句でした。

ウイッキー この句が描いている感覚は体験したことがあります。思わず選びました。

金子 この作者は日常の些細なところを詠んでいるんだけど、そこに詩を感じているんだろうな。トリビアルな視線が好ましくて私も取りました。

ヴルピッタ 私はやや人工的に過ぎる句だと思って選べませんでした。素朴な句がお好きなゾペティさんが選ばれたので驚いた(笑)。

ビナード いってみれば、1つの比喩がそのまま1句になっているわけで、ちょっと選べなかったな。

「大根煮芥子たっぷり汗が出る」汗の前に涙じゃないの?

金子 では3点句。「大根煮芥子たっぷり汗が出る」。これもゾペティさんお取りになっているね。

©iStock.com

ゾペティ 大根煮、大好物です。いつも芥子をつけすぎる(笑)。非常に家庭的な場面を詠んでいますよね。

ヴルピッタ この日常性がよかったです。お酒がすすむ句。私は日本に来てはじめて大根を食べましたが、今では大好物ですね。

ウイッキー 私いまちょっと風邪気味ですから、暖かそうなこの句に反応してしまいました。

ビナード ぼくも大根煮は好きだけど、これは説明の域を出ない。最後の5文字で一ひねりできたんじゃないかな。

アーサー・ビナード(詩人・アメリカ代表)

 私も「汗が出る」に引っかかった。芥子たっぷりなら、まず涙が出る。

金子 えらい科学的だねえ。私もこの「汗が出る」が日常的過ぎたと思って選べなかったんです。