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ーー小室さんにとっては、初めて現実的な進路を示してくれた人だと。 

小室 そうですね。 

ーーでも、ちょっと意地の悪い見方をすると、転がすのが巧みな方といいますか。 

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小室 はい(笑)。相手はもう百戦錬磨だったので。いまでこそ私もそう思いますけど、当時の自分にとっては信頼できる数少ない大人のひとりといった感じでしたね。 

「AV女優は芸能人じゃない」

ーー他にも、「出演料を抑えて長く続けた方がいい」など、当時の社長は独特なアドバイスが多かったそうですね。 

小室 「AV女優は芸能人じゃない」って、はっきり言われたのを憶えています。

 二十数年前のことなので、現在とは環境も状況も違うという前提のもとでの話として聞いてほしいんですけど。ぶっちゃけ、AV女優さんって芸がないです。芸があったら、最初から芸能人になってますから。だから、AV女優は芸を身につけて芸能界に行くんです。 

 

 でも、AV女優さんの一番の武器は何かというと、セクシャリティ。セックスですよね。もともとの入口が違うし、そこから印象をつけられていくから。やっぱりそうした状態から芸能界で芸を身につけたとしても、どうしたって人の印象って変わらないんですよ。 

 ということを、当時の社長は二十数年もAV業界にいてわかっていたので、AV女優は芸能人とは違うんだよと、ことあるごとに言っていました。 

ーーリアルでシビアな言葉ですけど、それを言われて落ちこんだりは。 

小室 そういうものなのかなって(笑)。抵抗感もなかったし、「どうせ、私は芸能人にはなれないんだ」って卑下することもなくて。そもそも「芸能人になりたい!」という気持ちがなかったので。 

現役時代の小室友里さん

 だから、いい意味でAV女優道を貫こうと思っていました。それに、私は十代を体育会系で過ごしてきたので、厳しいことを言われることも、肉体的にしんどいことも、わりとふんばりがきいたんですよ。 

ーー「週刊大衆」に連載されていたコラムで、小室さんは「AV女優の悩みはギャラの支払いと、事務所に対する不信感」と書かれています。これは自身のお話というよりは、他の事務所の女優さんたちが置かれていた境遇を目の当たりにしてのご意見ですか。 

小室 他の事務所の女優さんとイベントで一緒になると、仲良くなるんですよ。それで話を聞くと、やっぱりギャラの未払いは結構あったし、それに対して動きようがない女優さんたちがいっぱいいたんです。 

 

 やっぱり雇用形態の問題ですよね。いまでこそ、AV女優は個人事業主だといった話が出ていますけど。当時は、そんな概念がまったくないので。「なにかおかしいな」となっても「でも、私は所属している身だし……」「事務所にお世話になってるし……」という認識だから。

 弁護士を雇うという発想もない。労働環境をめぐる情報ソースも少なかったし、女の子たちが自主的に情報を取って勉強できる時代でもなかったので。 

 そういうなかで、他の事務所の女優さんと話をすると「私とあの子のギャラが違う!」と気付いて不信感を持つわけですよ。