昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2022/07/12

 15年を超える寝たきり生活の結果、20~30代の大半という、人生の中でも重要な時間を失うことになった。だが、自分はまだ老け込む年齢ではない。これからの人生でできることもたくさんある──。気を取り直した伊藤は、自分と同じように、働きたいのに働けない状況にある人をサポートしようと考えた。営業が得意な自分が受け入れ先を開拓し、就労の機会を提供するというアイデアである。

「病気でいろいろ考えていた時に、日本には20~30%の状態の人でも働けるような場所がないな、と。そういう仕事をつくり出して、働きたいのに働けない人をつなぎたいなと思ったんです」

伊藤が見つけた「新しい仕事」

 もっとも、当時の伊藤は就労支援や福祉について何も知らない状態だ。そこで、自分の思いを形にするためいろいろ調べ始めると、「パーソナル・サポート・サービス」の存在を知る。

 パーソナル・サポート・サービスとは、生活困窮者自立支援法の前身に位置付けられる制度で、失業や健康問題など、様々な事情で生活上の困難に直面している人に対して、専門の担当者が自立に向けた個別支援を提供するという仕組みだ。民主党政権下の2010年に内閣府のモデル事業として始まり、横浜市や釧路市、京都府、野洲市などの自治体が実施した。

 このモデル事業に相模原市が手を挙げたことを知った伊藤は、「就労先の企業開拓で協力しますよ」と営業に行き、同市のモデル事業を手伝い始めた。そして、モデル事業の中で知り合った人から、千葉県でユニバーサル就労を手がける生活クラブ風の村の存在を聞かされる。

「伊藤さんがやりたいって言っているのは、こういうことじゃないですか?」

 そう教えてくれたのだ。

誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課

篠原 匡

朝日新聞出版

2022年6月20日 発売

この記事の写真(2枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー
z