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「スプーン曲げはインチキか」ユリ・ゲラーを追ってアメリカへ…若きMr.マリックが挑んだ「超能力の謎」その真相は

Mr.マリックさんインタビュー #2

2022/07/16
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「一生このままでいい」と思ったが…

――実演販売でデパートを転々と。

マリック 八重洲の大丸、渋谷の東急、新宿の伊勢丹ですね。伊勢丹でやっていた頃には量販店の時代に入っていて、土日になっても子供が少なくなったと感じて。そこから自分でなにかしようと、スイッチが入ったんですね。

 渋谷駅前の東急文化会館でマリック手品教室というのを始めたら、思いのほか成功したので市ヶ谷とか3ヶ所くらいで教室を開いて。伊勢丹の実演販売が終わったら、7時から手品教室で教えていました。で、五反田の小さなビルの3階に個人レッスンの教室も開いてね。今度は生徒さんが多くなったので、教材を置くうちに「マジックショップ マリック」という手品道具の専門店になった。

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 そうなっちゃうと、もうプロになろうなんていう夢は全然ないですよ。実演販売だけでも十分に食べていけたし、家庭もできたし、一生このままでいいなと思って。

五反田で「マジックショップ マリック」を経営

ユリ・ゲラーのスプーン曲げの衝撃

――後にマリックさんの代名詞となる「超魔術」や「ハンドパワー」は、ユリ・ゲラーの存在がヒントになったと聞いています。ユリ・ゲラーのブームは70年代ですから、まだマリックさんが実演販売をされていた頃ですよね。

マリック そうですね。当時、私はチャイナリングという金輪の手品用品の実演販売をやっていたのですが、まったく売れないし、人も集まらない。集まっても「それ、タネあるんでしょ」と言われて逃げられちゃう。ようするに、ユリ・ゲラーを見た人は、マジックをインチキだと言って相手にしなくなった。マジックはタネがあるからインチキで、超能力はタネがないからインチキじゃない、と。

 それでもめげずに実演販売を続けていたら、ある時、中年女性のお客さんが「うちの子、スプーン曲げられるよ」と話しかけてきたんです。「うちに段ボールいっぱいに曲がったのがあるから、見に来る?」と言われたので、ご自宅にお邪魔したら、ほんとうにグニャグニャに曲がったスプーンがたくさんある。

 

 そこからスプーン曲げについて真剣に考えるようになりました。正直、ユリ・ゲラーがやっているぐらいのことは、マジシャンの私たちにもできる。でも、その子供はどうやってスプーンを曲げたのか。もしユリ・ゲラーが出ているテレビ番組を観て、「あなたにもできます」という暗示によってスプーンを曲げたのなら、これはマジックではありません。

――この現象は一体なんだろう、という疑問が生じた。

マリック ユリ・ゲラーのスプーン曲げを超えないかぎり、世間の人たちの関心をマジシャンの方に振り向かせることはできないとつくづく実感して。ならば、スプーン曲げを追求しようと決心したんです。

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