サラ金は1960年代から急速に成長し、その高い利子によって多数の犠牲者を出しながらも、経営者が高額納税者番付に登場するほどに稼ぎ、やがて法規制などの要因で急速に廃れた。こうした経緯もあり、現代社会で悪の権化のように描き出されることも多い存在だが、本書は誕生以前からの100年の歴史を学問的な見地から辿り、もう少し違った一面を提示。「新書大賞2022」で大賞に輝いた。
「サラ金の被害は大きなものですが、一方でそれは、国の制度が行き届かない場面で、当座の生活費や運営資金を提供する一種のセーフティーネットのように機能していたことの裏返しでもありました。また、『ヴェニスの商人』ではありませんが、金貸しという職業は偏見に晒されやすい。著者はこのテーマを書く上でのそうした難しさを意識しながら、客観的な資料を駆使して、バランスのよい記述をされています」(担当編集者の上林達也さん)
サラ金の歴史を辿ることは、金融技術の進歩に始まり、家族関係やジェンダーといった労働や生活にまつわる日本社会の変化を描くことにも繋がっている。
「かつて大々的に放送され、人気を博したテレビCMを見たことがない人も、今や大勢います。平成の時代も歴史として研究の俎上に当たり前に載せられるようになったと、改めて感じた一冊でした」(上林さん)
2021年2月発売。初版1万2000部。現在5刷5万3000部(電子含む)