キャンプベースはストレスフリーな空間
目的地としていた河原まで辿り着くと、いくつかのグループがキャンプを設営しており、河原で遊ぶ子どもたちの姿も見られた。
よく見るキャンプ場の風景だが、河原に辿り着くまでには相当な悪路を突破しなければならないため、キャンプベースには「ガチ感」あふれる四駆の車が並んでいる。取材班が加わったグループには、優に20名を超える参加者がいた。
アウトドアに馴染みのない取材班は、どのように振る舞うべきか迷っていたが、参加者たちは見ず知らずの我々に気さくに声をかけてくれる。差し入れられたスポーツドリンクが、緊張しきっていた身体に沁みた。
どうやら決まった楽しみ方はないらしく、テントの中で寝転んだり、車のボンネットを開け談笑したり、数名でオフロード走行に向かったりと、各々がストレスなく過ごしている印象だ。
岩に乗り上げ、ひしゃげてしまったボディを自身で板金修理する男性の姿もあった。緩やかなつながりを保ちつつ、互いの自由な行動を受け入れる寛容な空気が感じられる。
ピンチでの「助け合い」がコミュニケーションを生む
「キャンプ趣味の四駆乗り」と聞くと、「陽気で日焼けした、筋肉質の男性」を思い浮かべてしまうが、実際に集まっている人たちのキャラクターは実にさまざまだ。取材したグループを取り仕切る人物は次のように言う。
「親子連れで来る方も多いですし、年齢層としても10代から60代まで隔てなく交流していますね。今日も初めて参加している人がいるんですが、ああいう風に、走るなかで自然にコミュニケーションが生まれるんですよ」(グループ代表者)
指された方を見ると、ジムニーがブロックを乗り越えようと奮闘しているところに、常連が集まり進入角度についてアドバイスをしている。
「あのような形で、皆さんがお互いに助け合いながら楽しんでいるので、一日過ごせば自然と友達になっちゃうんですよね。そのまま野営して、お酒でも一緒に飲めばもう親友です。
自分もここで何度かハマって動けなくなったところを、周りの人たちに助けてもらったことがあります。『ありがとうございます』から『今度また遊びに行きましょう!』というように、自然に輪が広がっていくんですよ」(同前)
スタックや横転のリスクとつねに隣り合わせのオフロード走行においては、少なからずドライバーは緊張や不安に苛まれる。自力では脱出しえない状況に陥ったとき、見返りなく救いの手を差し伸べてくれる周囲の存在は、何よりありがたく感じられるはずだ。