京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 宿縁の道篇』(文春文庫)より、背筋も凍る「清掃」を特別公開。気味の悪いマンションの清掃を依頼された「私」と若い従業員。そこで彼らを待ち受けていたのは――。(全2回の2回目/前編から続く)
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木村君と2人、深夜の2時に会社の車であのマンションへと向かいました。その途中、木村君は、私をからかうようにこう言って来ました。
「社長って案外、迷信深いんですね」
「迷信深いっていうより、正直怖いんだよな」
「お化けなんかいる訳ないですよ。それに神様が居たとしたら、世界から戦争なんか無くなってるんじゃないですか」
「いや、俺は人間の心が悪いから、神様があえて身を隠してるって聞いた事がある。心の綺麗な人間になれば神様も姿を見せて助けてくれるんじゃないかな」
そんな話をしている内に、車は深夜のマンションに到着しました。
清掃を開始、すると異変が…
私達は早速エレベーターに乗り込み、落書きを消し始めました。本来はエレベーターの電源を止めたりするのですが、深夜の事でそう長い時間がかかる作業でもなさそうだったので、1階で扉を開いたまま作業を進めました。落書きに使われているインクは、それほど落ちにくい物ではなく、特殊な薬剤を使うとさっと一拭きで消えていきました。
次に最上階に行き、盛り塩を撤去し、手すりにある鳥居を取り外す作業です。これはそれ程大した作業ではないのですが、私には心理的にかなりの抵抗がありました。恐れる私を尻目に、木村君はさっさと盛り塩を箒で掃いて、ちりとりでゴミ袋に放り込んでしまいました。