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圧倒的なコミュニケーション能力だが…カメレオン俳優・中村倫也(35)が明かしていた、過去の意外な「コンプレックス」

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2022/07/29
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有村架純とのコンビで「化学反応」か

 現在、TBSではドラマ『石子と羽男ーそんなことで訴えます?ー』が放送中だ。

 原作はなく、西田征史の脚本と『アンナチュラル』の塚原あゆ子演出によるオリジナル作品だが、そこで中村倫也が演じる弁護士、羽根岡佳男は、見たものを写真のように記憶する非凡な能力で司法試験に合格しながら、自分を型破りな天才弁護士として周囲に見せようとする弱さを抱えている。東大卒の堅物パラリーガル、有村架純演じる石田硝子との奇妙な二人三脚、バディストーリーが物語の軸になる。

『ハケンアニメ!』での王子千晴役の二面性にも通じるが、羽根岡佳男のようにクールな虚勢を張っている男が本質を突かれて狼狽する、あるいは軽薄に見えた青年がその奥にある真剣な情熱を見せる、そうした芝居が中村倫也は実に上手いのだ。オリジナル脚本ドラマは人気原作ドラマのように固定ファンを見込めない分最初は苦戦しがちだが、第1話と第2話を見る限り、有村架純と中村倫也が演じる主人公コンビの人物造形は実に魅力的に成功しているように見える。

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 これまで、中村倫也は俳優としての長いキャリア、高く評価される演技力に比較して、主演俳優としての出演は比率として多くなかったように思う。

 朝ドラ『半分、青い。』で演じたマアくんこと朝井正人は、「朝ドラの影響は凄まじかった。信号待ちしていたら、70~80歳のおじさんに『朝に出てるね』と声をかけられた」と本人が語るように、バイプレイヤーとしての知名度を一気に引き上げた。だが今、中村倫也は主演俳優としての第二ブレイクの時期を迎えているように見える。

 2020年以降『美食探偵 明智五郎』2021『珈琲いかがでしょう』そして2022『石子と羽男』。『ハケンアニメ!』は前述したように吉岡里帆主演、中村倫也は助演ではあるが、あの映画の王子千晴を見て、中村倫也を主演で起用したいと考える映画監督はさらに増えるだろう。

(「半分、青い。」公式サイトより)

 実は演劇ジャンルでは、中村倫也は以前から多くの作品に主演している。2014年には『ヒストリーボーイズ』の主演で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞している。

 筆者は、舞台公演を鑑賞することができなかったため、劇団☆新感線の 『狐晴明九尾狩』を映画館で映像上映する「ゲキ×シネ」を観覧したのだが、映画やドラマの柔らかな演技とはまた違う、よく通る声とキレのある動きで見事な舞台の演技を見せていた。有村架純が『石子と羽男』の前宣伝番組で語ったように、いくつもの豊かな引き出しを持つ俳優なのだ。

©️AFLO

 しなやかに人の心に踏み込むような中村倫也の演技を見ていると、彼とは親子ほど歳の離れた名優、火野正平の芝居を思い出すことがある。ナチュラルでリアルに、それでいて自由なその演技のスタイルは、『新・必殺仕置人』など時代劇から現代劇に至るまで、多くのファンを魅了した。バイプレイヤーから主演俳優へとまたひとつ変化の時期を迎える中村倫也という俳優は、この先も長く日本の映画、ドラマ、演劇を支える役者になってくれるかもしれない。

圧倒的なコミュニケーション能力だが…カメレオン俳優・中村倫也(35)が明かしていた、過去の意外な「コンプレックス」

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