1ページ目から読む
2/5ページ目

 特に、工藤會の資金源と見立てていた漁協関係者や建設業者に対する警察の捜査は乱暴だった。「暴力団の資金源を止める」などとして、繰り返し漁協関係者を背任などの容疑で逮捕したが、容疑が固まらず起訴できないことがままあったのだ。

 起訴できない捜査は、結果として「言いがかり」になる。漁協、建設業者らの反発は強かった。彼らは、拳銃を突き付けて恐喝する工藤會も嫌ったが、警察も同様に嫌った。それが、工藤會の摘発が進まない一因になったと筆者はみている。

検察と警察の不毛ないがみ合い

 福岡県警と検察の不仲も、工藤會捜査の停滞を招いた一因だった。

ADVERTISEMENT

 一部の不心得者の所業とはいえ、情報漏洩などの不祥事続発は、県警の士気の低下を示すものだ。検察には、警察の捜査が適正手続きで行われているかをチェックする役割がある。福岡地検や小倉支部の検事たちが、県警の捜査を警戒し、送致をうけた証拠の内容や収集方法について厳しい判断をするのは理解できなくはない。

 そして、検事たちにとって、乱暴な捜査で起訴できないような事件を押し付けられるのが何より困る。無理に起訴して無罪になれば、起訴した検事には罰点がつき将来のキャリアに影響するからだ。ただ、捜査している警察側からみると、それは、検察のやる気のなさと映る。

 県警と検察の仲の悪さを象徴するのが、2001年2月、報道で発覚した福岡地検次席検事の山下永寿の情報漏洩疑惑だ。

 福岡高裁判事の妻が、伝言サービスで知り合った会社員をめぐり三角関係になった女性に脅迫メールを送り、会社員の勤務先に嫌がらせ電話をするなどのストーカー行為を繰り返したとして、実刑判決を受けた。

 山下は、その捜査を進めていた警察に無断で判事と面談し、判事の妻がストーカー行為で告訴されて捜査対象になっており、確実な証拠があることなどを伝えた。その結果、妻は携帯電話を廃棄するなど証拠隠滅を図り、容疑を否認した。