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余命3か月の父のために娘が結婚式を開催…付き添いの看護師が挙式当日の朝に驚愕した“衝撃的な事実”「え? 嘘でしょ?」

『自分らしい最期を生きた人の9つの物語』より #1

2022/08/04
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篠田さん父娘の知られざる衝撃的な事実

 いよいよ結婚式当日の朝。

 そこで思いも寄らない衝撃的な事実を耳にしました。

 みきさんと篠田さん父娘(おやこ)間に、長い間確執があったというではありませんか! どこからどう見ても、仲むつまじい親子にしか見えないのに、あまりのギャップに「え? 嘘(うそ)でしょ?」とひっくり返りそうになりました。

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 2人の間の知られざるドラマは、彼女の学生時代にまでさかのぼります。

 小さいころはお父さんのことが大好きで、仲がよかったというみきさん。高校生のときにお父さんが肺がんを患い、家にいる時間が長くなったことで、彼女の行動に対して何かと口を挟まれるようになりました。

「ただいま」

「いったい、こんな時間まで何やってたんだ!」

 みきさんの帰りがちょっとでも遅くなるとガミガミ。

「何って、友達とちょっと遊んでただけだよ。もう、お父さんうるさい!」

 最初こそはお父さんの小言に言い返していましたが、次第にうるさく言われるのが嫌になり、夜遅くまでアルバイトを入れて避けるようになりました。そうして互いに口をきくことも、顔を合わせることも少なくなっていったのです。

 その数年後、みきさんは職場の方とお付き合いするようになり、のちに妊娠が判明。いわゆる授かり婚をすることになりました。娘の突然の報告に、父はすんなり納得できず、ますます溝は深まっていくばかりでした。

写真はイメージです ©iStock.com

父娘関係を見守り続けてきた母が大きな病に襲われる

 そんな父娘(おやこ)関係をそばで見守り続けてきたお母さんが、突然大きな病に襲われてしまいました。悪性リンパ腫にかかってしまったのです。

 病床でつらい治療に励みながらも、母は折りに触れてこう言いました。

「みき、結婚式は挙げないの? お母さんは式をやってほしいな」

「うーん。でも、旦那さんの仕事も忙しいし、今はまだ難しいと思う」

「そっか……。なら、いいの。私のわがままを言ってごめんね」

 両親ともにクリスチャンであることから、「神様の前できちんと結婚を誓ってほしい」という母の望みは、子どもなりによくわかっていました。同時に、「結婚式を機に、お父さんと仲直りしてほしい」という願いも……。母の思いを痛いほど感じながらも、そのときはまだ、踏ん切りがつけられないでいたのです。

 不運は重なるもので、今度はお父さんがお風呂場で倒れて救急搬送。肺がんが脳に転移し、さらに病状が悪化してしまったのです。口うるさかった父がどんどん口がきけなくなり、弱り果てていく。その姿を目の当たりにするうちに、みきさんはこれまでの父への態度を省みるようになりました。

 ふと、だいぶ前にお父さんからSNSの友達申請が来ていたことを思い出しました。申請が来ていたことはわかっていたものの、ずっと向き合えずにいたのです。