「世界的には人口が増えて経済成長しているため需要が高まり、エネルギーも食糧も価格水準が一段上がったのです。昨年、日本の農産物輸入額は7兆円台まで増えましたが、数量ベースでは減っているものもあり、買い負けしています。中国とロシアの台頭により地政学リスクも高まり、日本はこれまでのようにお金を出せば買えるという恵まれた状況ではなくなりつつあるのです」(柴田氏)
日本人の給料が上がらない原因
物価が上昇しても、それと共に給料が上がればいいが、日本は、先進諸外国に比べて惨憺たる有り様だ。
日本人の給料は97年をピークに減少傾向だが(民間給与実態統計調査)、その間、先進諸外国の給料は上がってきた。世界の平均年収ランキング(20年)1位のアメリカは、97年以降の上昇率38%で763万円まで上がった。対して日本人の平均年収はニュージーランド、スロベニア、韓国にも抜かれて424万円。アメリカ人の半分程度になってしまったのだ(OECD、1ドル110円換算)。
日本人の給料が上がらない原因を7人の識者が論じた『日本人の給料』(宝島社新書)。筆者がインタビューを行ったが、人事コンサルタントの城繁幸氏は「終身雇用・年功序列賃金」を、一橋大名誉教授の野口悠紀雄氏は「デジタル化の遅れ」を、東京都立大教授の脇田成氏は「企業の内部留保の過剰な蓄積」を原因として挙げた。ここで考えるべきは、経済グローバル化が進む中でこれらの原因が日本固有かつ根深く、簡単には変わらないという問題だ。
物価が上昇しても給料が上がらなければ貧しくなる
一方で、経済グローバル化に翻弄されて給料が上がらないという側面もある。
「外国人投資家のプレッシャーもあり、企業の利益分配の構造が変わり、労働者への分配より株主への配当を優先する傾向が強まっています」(経済誌記者)
97年以降、日本企業の人件費総額が減少傾向にある中で、株主への配当は約22兆円増えた。コロナ禍により、20年度の人件費総額は約7兆円削減されたが、配当は逆に約3兆円も増えている(法人企業統計)。
物価が上昇しても給料が上がらなければ、日本人はジワジワと貧しくなる。
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