文春オンラインで報じた、東京女子医科大学の岩本絹子理事長をめぐる「疑惑のカネ」が、急展開をみせている。(東京女子医大の闇 #1 #2 #3

 東京国税局の"最強部隊"といわれる課税第二部資料調査課「通称:リョウチョウ」が、この報道の翌日に女子医大の税務調査に着手したのだ。

 疑惑追及キャンペーン第4弾では、知られざるリョウチョウの実像と調査のポイントについて、東京国税局OBの佐藤弘幸税理士の全面協力を得て、徹底検証する。

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エリート集団「泣く子も黙るリョウチョウ」

 学校法人・東京女子医科大学の河田町キャンパス(東京・新宿区)の中心には、「女子医大通り」が貫くように通っている。その両側には、赤レンガ色の校舎などが立ち並ぶ。岩本絹子理事長の肝煎りで莫大な資金が投入され、次々と建て替えが進められているのだ。建物が赤レンガ色で統一されているせいか、女子医大を「赤い巨塔」と呼ぶ人もいる。

岩本絹子理事長と「赤い巨塔」

 一方、重厚な施設と対照的なのが、河田町キャンパスの端にある「巴女子学生会館」だ。プレハブのように簡素な3階建ての建物で、数年前まで理事長室や経理課が置かれていた。

 2020年、岩本理事長は理事長室等を、新築した「彌生記念教育棟」に約6億円の追加費用をかけて移転させたが、これには職員から批判の声が上がった。

巴女子学生会館

 7月20日午前9時半過ぎ、この「巴女子学生会館」に、黒いバッグを手にした1人の中年の男性が入った。しばらくして、また1人続く。同じ雰囲気の男たち5人が、時間をずらして次々と建物の中に入っていった。

 この日から、東京国税局の課税第二部(法人担当)資料調査課が、女子医大の税務調査に着手したのだ。税理士や公認会計士たちは、彼らをこう呼ぶ。「泣く子も黙るリョウチョウ」。

「リョウチョウ」とは、資料調査課を指す隠語で、「コメ」、「リョウ」と呼ばれることもある。調査を担当するのは、実査官(実務指導担当調査官の略)。東京国税局の管内に84ある税務署の幹部まで指導する立場にあり、国税局のエリート集団といわれる。高い調査能力から、東京国税局の最強部隊と評されるほどだ。

 伊丹十三監督の映画「マルサの女」などの影響もあって、「マルサ=国税局査察部」の存在を知る人は多い。マルサ(査察部)の任務は、裁判所の令状を取って強制調査に踏み込み、隠していた現金や貴金属など脱税の証拠を押さえ、検察庁に告発することだ。