公益法人の税務調査は極めて難易度が高い
「私が現役の時は、調査に入る前に50ページ以上の準備調査資料を作成して、具体的な脱税の手口やカネの流れを想定していました。記事にあるようなチャートも作ります。文春オンラインが指摘した『第3の疑惑』に関しては、謝礼分が水増しされて、理事長などにキックバックされている、と想定して調査すると思います。キックバックされたカネの流れが確認できると、カネを受け取った法人、または個人の課税にまで波及することになるでしょう」(佐藤弘幸税理士)
佐藤税理士によると、学校法人などの公益法人の税務調査は、極めて難易度が高いという。
最大の要因は、公益法人が基本的に「非収益事業」だからだ。つまり、法人税の対象ではないので、追徴課税をかけることはできない。
女子医大の令和2年度決算では、約1,273億円の収入があるが、このうち課税対象となる「収益事業」は約12億円に過ぎない。
「記事では、出向職員の水増し請求や、ケネス社との契約手続きが公私混同だと指摘されていますが、女子医大の非収益事業の範囲であれば、脱税には問われません。そこが、公益法人の調査が難しいところなのです。ただし、『第2の疑惑』のケネス社が、女子医大から得た利益についてちゃんと税金を払っているか、誰かにキックバックしていないか、調査で解明できると、カネを受け取った側に脱税を問える場合もあります」(佐藤弘幸税理士)
前年度の決算を公表していないのはなぜか? 広報室は取材拒否
女子医大は、例年6月上旬にホームページで前年度の決算を公表しているが、8月4日時点でまだ掲載されていない。コロナ禍とは言え、去年は6月中に公表しているので、今年は何らかの異変が女子医大の内部に起きているのではないか。
決算が未公表であることやリョウチョウの税務調査について、女子医大・広報室にメールで質問状を送ったところ、「取材には応じない」旨の回答が電話であった。
東京国税局は秘密主義が徹底しており、リョウチョウの調査状況の全容は明らかにされていないが、8月4日にも再び女子医大の調査に入ったことを確認した。
医師や看護師の大量退職が止まらず、女子医大の経営基盤そのものが揺らいでいる中、東京国税局によって「疑惑のカネ」の流れが解明されるのか、注目されている。
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