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神戸で見つけた“小さな中華料理屋” 70歳店主がつくる「480円のラーメン」は絶品だった!

B中華を探す旅――神戸「宝美園」

2022/08/08
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もうすぐ創業50年

 ところで呉さん、お名前からしてご出身は……?

「中国です。向こうから来たんではないけどね。生まれは岡山の津山で、親が疎開しておって」

 やがて、先代がこの地に開いた店を受け継いだわけだ。ちなみに初めて来た当時は現在のような歓楽街ではなく、「ここでやっていけるん?」と思うくらいなにもなかったのだという。

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「たまたま知り合いがここで雑貨屋をしとって。もうあかんからと、又借りみたいにして。それでここでしたんが、それからやけどね。昭和50年か51年ぐらいやから。もう3年、4年したら50年になるんちゃう? もう半分潰れかけとる(笑)」

 

 店に入ったのは22、3歳のときで、最初から継ごうという意志がおありだった。

「そのときは借金しとるから、しゃあない(笑)」

 やがて、奥様と出会って結婚。当時は周辺に会社も多く活気があった。

「だいぶ減ったわ、常連も。会社がぎょうさんあってん、昔。労働金庫もあったし、『シンヤクドー』ってあったでしょ、あれの本社みたいなんもあったし。で、この上にも薬屋があって、そこにも薬屋があって。でも、みんなどこかへ行ってもうたんや」

 

「子どもは娘だけやから。跡継ぎはおれへん」とおっしゃる。これも、取材時によく聞くフレーズだ。寂しい気もするが、いま、そういう店は少なくないのだ。

「(奥様も)足悪いからね、もう。よう歩かれへんから、できるところまでして。いつやめるかわからん。ボロボロで、もうほったかしやねん。だから、壊れたら壊れたで終わりやね。宣伝もせんし、ほんま、来てくれる人だけ相手して。あんまりバッと来られても、動かれへんもん。(グルメサイトから)電話もようかかってくるけど、みんな断っとるんや。ヨボヨボ2人やから、もうボロボロやし」