全国各地で“実話怪談”を蒐集する団体「怪談社」を主宰する糸柳寿昭氏。不動産会社を経営する知人に「なにか怖い物件とかないですか」と尋ねると「幽霊がでるって物件は聞かんけど、なにをやってもうまくいかん物件はありますね」という返答が。

 いわく付き物件で起きた不可解な出来事の数々とは……?

 ここでは『忌み地 怪談社奇聞録』(福澤徹三、糸柳寿昭 共著)より「瑕疵店舗」を抜粋してお届けする。

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「なにか怖い物件とかないですか」

 今年の4月上旬、糸柳は大阪で不動産会社を経営しているF谷さんに逢った。

 F谷さんとは、糸柳が関西に住んでいた頃からのつきあいで、怪談社の活動も知っているから、そういう話をしても支障はない。

 今回は仕事で上京したというF谷さんに、糸柳は本書の企画を話して、

「なにか怖い物件とかないですか」

「幽霊がでるって物件は聞かんけど、なにをやってもうまくいかん物件はありますね。ほらM島さん、知ってるでしょう」

写真はイメージです ©iStock.com

 M島さんも大阪で不動産会社を経営していて、糸柳とつきあいがある。M島さんはそれが営業方針なのか、いつも安い物件ばかり購入する。

 あるときM島さんは、破格の価格で売りにでていた中古マンションの一室を購入した。その部屋は知人の老婦人に貸したが、まもなくクレームをつけてきた。

 階段をのぼりおりする音がうるさいとか、上の部屋の住人が夜中に騒ぐとか、ふつうのクレームもあったが、

「冬なのに大きな蠅がいる。夜になると、ベランダから男が覗くっていうんです」