著者は立命館大学大学院教授、専門は哲学・表象文化論。小説家としての一面もあり、代表作『デッドライン』は第162回芥川賞候補に。さらに、SNSでの刺激的な発言でも日々注目を集めている。そんな今の人文業界を代表するスターによる、「超」がつくほど明快な現代思想入門書がスマッシュヒット中だ。
「目指したのは極めつけのわかりやすさ。『この思想家・哲学者は、ひとことでまとめるとこう言っています』というレベルまでアウトライン化することでした。それにはやはり深い教養と鋭い感性が必要。高い解像度で思想書を読み込んでいる著者だからこそ実現できたのだと思います」(担当編集者の栗原一樹さん)
デリダ、ドゥルーズ、フーコーのポスト構造主義の三巨頭を軸に、〈脱構築〉、すなわち、〈秩序と逸脱〉の運動としての現代思想の見取り図を描き出す手付きは鮮烈。かつての類書のように、難解な専門用語を説明抜きで振り回して読者を置き去りにすることもない。そんな書きぶりもあってか、かつて現代思想に親しんだ中高年に留まらず、若年層にも読者は広がっている。
「中学生くらいの女の子が親と買っていた……という目撃情報を耳にしたんですよ。さすがにこれは特殊事例かと思うのですが(笑)、親世代が子供に薦めるなんて需要もあるのかもしれません」(栗原さん)