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「中体連は全国大会の開催に反対するために作られた組織なんですよ」

――スポーツ庁が中体連に全国大会の見直しを求めたのも、そういう理由があったのですね。中体連側の反応はどうだったのでしょう?

中澤 「全中」の縮小や廃止に向けた動きは、現実にはほとんど起きていません。スポーツ庁の検討会議には中体連も参加しましたが、縮小するどころか、今後は中学校の部活だけでなく地域のクラブチームも全中に参加できるようにするなど、なんとかして全国大会を維持する方向で議論が進みました。ただ論文にも書いたように、中体連はもともと大会の拡大や全国大会の開催に反対するために作られた組織なんですよ。それが今では、全中を開催するための組織のようになってしまっているんです。

部活の厳しすぎる指導法が問題になった大阪市立桜宮高校での体罰事件 ©共同通信

――まさにその、中体連が全国大会を阻止する組織という部分が意外でした。中体連と言えば高野連や高体連と並んで「スポーツには価値があるので大会をどんどん拡大しよう」という組織だと思っていました。

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中澤 それが一般的な認識だと思います(笑)。ただ歴史を振り返ると、そもそも戦後すぐの1948年に文部省が出した通達では、中学生の大会は原則は校内のみ、許容できる範囲は宿泊を伴わない都道府県大会までと明記され、全国大会は禁止されていたんです。

スポーツ庁の有識者会議 ©共同通信

「大会をやらせないように思想統一を計ろうではないか」

――なぜ禁止されていたんでしょう。

中澤 実施するためのコストが大きいという問題に加え、勝った人だけが上がっていくという「スポーツ」の性質が、全ての生徒に体を動かす楽しさを平等に伝えようとする「教育」の側面とぶつかる問題も大きな理由でした。当時は平等主義的な「体育」が正しくて、勝つことに価値を置く「スポーツ」は悪者だったんです。中体連が全国組織化された1955年に、理事だった山岡二郎氏が語った設立理由にも、大会を拡大しようとする水泳連盟などの各スポーツ団体への対抗意識が見てとれます。

――論文でも引用されていた「……ブロック大会や全国大会が開催されては直接の被害者はわれわれ中学だから、ぜひそうした大会をやらせないように思想統一を計ろうではないか。又スポーツ団体に押されないようにするには、われわれは大団結をしてかからなくてはならない。ということで全国中体連が結成されたと記憶する」(中体連の年度報告書「情報交換誌」9号より)というものですね。「被害者はわれわれ中学」、「大会をやらせないように」など、かなり強い言葉が使われています。