体罰や水分補給禁止、ウサギ跳びの強制など、今では考えられないことが行われていたひと昔前の部活動。近年はそういった環境が改善されているが、まだ科学的かつ理論的なトレーニングが浸透しているとは言い難い。間違ったトレーニングやケアを実践してしまうと、体を壊すリスクもある。
そうしたリスクの回避方法や、効果的なトレーニング・ケアの仕方を記したのが、フィジカルトレーナーとして青学駅伝部を優勝に導いた中野ジェームズ修一氏の著書『子どもを壊す部活トレ 一流トレーナーが教える本当に効く練習方法』(中公新書)。ここでは同書から一部を抜粋し、女性アスリートと月経(生理)の関係や向き合い方を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
◆◆◆
「女性アスリートは月経とどう付き合うべき?」
A 無月経では結果的に強くなれない
B 無月経は練習でよく追い込めている証拠
月経は女性に必要なもの。無月経は問題です(正解はA)
「女性アスリートは月経が止まった方が強い」「無月経は追い込めている証拠で、月経が来るのは練習量不足」などと考えている人が今でもいるようなのですが、言語道断です。昔は体重が1キログラム減るとマラソンが3分早くなる、と言われていた時代もありましたが、過酷な減量やハードに追い込むことによる無月経は、女性アスリートの体にとって決して良いことではありません。
体重が軽い方が有利な競技や、美的な要素が高い競技では、太っちゃいけない、体重を落とせと言われ、体重を毎日計測して記録するといった指導を受けることがあるようなのですが、減量すること、食事を制限することのデメリットを監督やコーチはもちろん、選手本人や保護者も理解していなくてはいけません。
女性アスリートが陥りやすい健康問題は、女性アスリートの3主徴(Female Athlete Triad)と呼ばれています。その3主徴とは、利用可能エネルギー不足、視床下部性無月経、骨粗鬆症で、これらはそれぞれが関係し合ってもいます。
多くの場合、エネルギー不足がトラブルを引き起こす発端になっています。中学生、高校生の年代は、成長期であり、運動部に所属していれば運動量も相当なものになります。女性アスリートだから食事を控えても大丈夫などということはなく、男性アスリートと同じように栄養を摂取する必要があります。
それにもかかわらず過度なカロリー制限や食事制限をすると、すぐにエネルギー不足に陥ってしまいます。エネルギー不足の状態が続けば、体の健全な発達を阻害しますし、競技のパフォーマンスも低下、精神面への悪影響も出てきてしまいます。