体罰や水分補給禁止、ウサギ跳びの強制など、今では考えられないことが行われていたひと昔前の部活動。近年はそういった環境が改善されているが、まだ科学的かつ理論的なトレーニングが浸透しているとは言い難い。間違ったトレーニングやケアを実践してしまうと、体を壊すリスクもある。

 そうしたリスクの回避方法や、効果的なトレーニング・ケアの仕方を記したのが、フィジカルトレーナーとして青学駅伝部を優勝に導いた中野ジェームズ修一氏の著書『子どもを壊す部活トレ 一流トレーナーが教える本当に効く練習方法』(中公新書)。ここでは同書から一部を抜粋し、栄養バランスを整える食材や食事方法を紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「栄養バランスってどうやって整えればいい?」

 A 糖質や脂質を控えてタンパク質をたくさん摂る

 B 肉は控えて野菜をたくさん食べるようにする

1日14品目摂取で栄養バランスを整えましょう(どちらも不正解)

 トレーニングの世界では運動、休養、食事が3本柱と言われます。このうちどれか1つでも欠けると、パフォーマンスは高まりません。いくら練習を頑張っても睡眠や食事を疎かにすると、強い選手にはなれないということです。

 私はこれまで多くのアスリートを指導してきましたが、トップアスリートほど、食事に細心の注意を払い、栄養バランスが整っています。

 中学生、高校生の年代は成長期でもあります。パフォーマンスアップやコンディション維持のためにはもちろん、体の健全な成長のためにもさまざまな栄養素をバランスよく摂取する必要があります。

写真はイメージです ©iStock.com

 糖質制限やカロリー制限に代表されるような、食事に制限をかける食事法や、ある特定の食材だけを食べ続ける食事法など、食事についてはいろいろな情報が出回っていますが、結局のところ健全な食事はバランスよく食べることに尽きます。

 たとえば糖質や脂質は悪者にされがちですが、どちらも必要な栄養素です。過剰摂取は肥満や生活習慣病の原因になりますが、糖質はとても重要なエネルギー源。特に、脂質をエネルギーに変換する工場であるミトコンドリアを持っていない脳や神経細胞にとっては、糖質が原則的に唯一のエネルギー源と言われています。中学生、高校生の年代での極端な糖質カットは大人以上にやめてほしいことです。

 また、筋肉の主なエネルギー源は糖質と脂質ですが、強度の高いトレーニングをするときには糖質が使われます。糖質不足は、トレーニングの質の低下やスタミナ切れに繋がってしまいます。

 脂質が重要なのも同様です。脂質はエネルギー源として使われるだけでなく、細胞膜やホルモンの材料になるものです。脂質を構成する脂肪酸には、体内で合成することができない必須脂肪酸と呼ばれるものがあります。必須脂肪酸は食事から摂取しなければならないものなので、脂質を極端にカットした食生活をしていると、足りなくなってしまうのです。