ガヨ・ウープナ:エー、食べたことがあるの。苦いんでしょう?
ロシン・ユーラオ:苦いというより酸っぱい。人間の肉は手とか足とか、食べるところは少ない。腿とか胸の肉を食べる。……そして、脂肪が少ない。骨ばっかり。骨は捨てる。内臓もいらない。捨てる。
菊池:それは瘦せ細り、すでに腐っていたのではないですか。
ロシン・ユーラオ:そうかもしれない。
「ある時、アメリカ兵を処刑することになった」
ガヨ・ウープナ:聞いたところによれば、日本の兵隊は現地の食べ物が合わない。食べ物がない。そこで、高砂族が助けた。ジャングルに行き、猪の罠を仕掛ける。猪狩りもできる。日本兵は山狩りができないでしょう。
それを日本兵に食べさせたが、兵隊が多いから、それでも食糧が足りない。日本兵は食物が何もなくて、ひもじい時、食べないわけにいかんでしょう。その時、一番栄養があるのが人間の肉だけなのだから。
……ある時、アメリカ兵を処刑することになった。日本兵が「日本刀が強いか、蕃刀が強いか、競争しよう」と言った。日本兵が諸手で日本刀を握り、切ったが首が落ちなかった。
今度は義勇隊員が「蕃刀」で、「捕虜の首をとれ」ということになった。片手でサーッとやると、首が落ちた。やはり「蕃刀」が強い。刀身が短く、あとは技術の問題。
……食糧が足らないから、高砂族が「山肉」(猪や鹿の肉など)とアメリカ兵の肉を混ぜて炊いた。人間の肉だよ。日本兵に喰わせたそうだよ。「山の人」はこの肉が何の肉か知っているから喰わない。
だけど、後でアメリカ兵の肉と知って日本兵は皆、吐き出したそうだ。高砂族は「お前らは何もできない。山肉も捕れない、アメリカ兵の肉でも喰う」と心の中で嗤っていた。南方戦線に行った時に、そういう話があるんだ。
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このように、部隊によってかなり違いがあった。ただし「人肉食」は多くの部隊、兵士を巻き込んでいった。