「片付けるべきだとわかっているのに片付けられない」「片付けたいけど何からやればいいの?」そんな悩みを抱えているけれど、怠け者だと思われるのが怖くて誰にも相談できずにいる人は、実は多いのではないでしょうか。
特に発達障害の1つであるADHD(注意欠如・多動症)の人は、そういった困難を感じやすい傾向にあります。
臨床心理士の中島美鈴さんは『もしかして、私、大人のADHD?~認知行動療法で「生きづらさ」を解決する~』(光文社新書)の著者であり、自身もADHD傾向があることを公表しています。
この記事では、ADHDの診断を受けている人から、診断は受けていないけど部屋が片付けられなくて悩んでいる人までを対象に、片付けられない原因や具体的な対処法について、中島さんに質問して答えていただきました。(全2回の1回目/後編に続く)
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「片付けられない」3つの原因とは
――片付けができなくて、いつも部屋が散らかっています。「キレイにしなきゃ」と思い続けているのに、なかなか実行できません。どうして片付けられないのでしょうか。
中島 片付けができないメカニズムは、実はADHD(注意欠如・多動症)の特性で説明ができると言われています。その説明はADHDの診断を受けていない人でも、参考になると思います。
極端な話、ペン立てからペンをとって使ってすぐに戻せば、部屋は永遠にキレイなままのはずなんですよ。なのに、なぜ戻せないのかというと、ADHDの特性の1つである“衝動性”が関係しているんです。
――衝動性?
中島 例えば、私はハサミをよく失くします。ピンポーンって宅配便が届いて「Amazonからの荷物だ」「待ってた待ってた」と思いながら荷物を受け取って、開封するのにハサミを使った後、すぐに元の位置に戻すほど冷静でいられない。「届いた荷物の中が早く見たい」という衝動性があるから、目の前の品物に飛びついてしまうんです。だからハサミを元の場所に戻せなくて、部屋が散らかっていく。これが片付けられない原因その1ですね。
――すごくよくわかります。仕事から帰ってきた時に「早く座りたい」「すぐに食事がしたい」という気持ちが先走って、カバンや脱いだ服を散らかしたままにしてしまうことがあります。
中島 原因その2は、そもそも物の置き場をしっかり決めていないこと。例えば、自治体からの郵便物や税金の振込用紙など、何か重要な書類が届いたとします。もともと本棚の一角や手帳の中に“重要書類を入れる場所”を作っておけば、そこに片付けられますよね。
でも、物の置き場を決めず行きあたりばったりで生活していたら、ダイニングテーブルのすみっこなんかに書類がどんどん溜まっていってしまう。いつも山ができていて、時には雪崩が起きて……(笑)。そんな計画性の無さもADHDの大きな特徴のひとつなんです。