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食器洗いを溜めすぎて「箸が腐った」? 片付けられない人が“一番やってはいけない”禁断の収納方法とは

臨床心理士・中島美鈴さんインタビュー#1

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――戻すまでの手順が多いと面倒くさくなってしまうということでしょうか。

中島 一番やってはいけないのは、ハサミケースにしまって、引き出しの中に入れて……と手間がかかる片付け方をすることです。「ハサミがあそこにある」とすぐにわかってパッと戻せる、ワンステップ収納がおすすめ。

――片付けられない原因に「置き場が決まっていない」も挙げられていましたが、ワンステップ収納を意識して決めればいいんですね。

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中島 そうです。物を使う動線を意識して、無理のない置き場を決めればいいんです。

 あとは例えば、朝着替えるとき、特に女性は身につけるものが多いですよね。服、メイク道具、ストッキングや靴下類、アクセサリーなど……。一般的な家はそれらがすべてバラバラに収納されています。ピアスや化粧品はクローゼットの中に入れませんよね。部屋中に点在していると思います。

 それらを最初から1カ所に集めておけば、着るときも脱ぐときもそこで全部済むし、洗濯物をしまうときは一気にバーッて片付けられると思いませんか。「種類別収納にしなければいけない」という思い込みを捨てて、必要なものがそこですべて揃うような用途別収納にするといろいろ解決できますね。

©iStock.com

 この収納方法は忘れ物を防ぐ効果もあるんです。息子は忘れ物がすごく多いんですが、上下の服と靴下とマスクとハンカチをワンセットでぐるっとくるんで、1日分ずつ分けて収納しています。これならマスクやハンカチを忘れないし、上下の組み合わせも変な感じにならない。

――部屋が散らかっているせいで朝いつも探し物をしているので、試してみたいです。

中島 以前、会社員の女性にも同じことをやってもらったんですが、朝に着替える億劫感が減ったと言っていました。組み合わせを考えておいて制服化しちゃえば楽になるし、ペアで片付けるようになるので散らからないんです。

 あと、ADHDの人によくおすすめしているのは「なくすとマジでヤバい」ものを置く“聖域”を作ることです。印鑑、パスポート、銀行通帳、年金手帳などはとにかく死守する。最悪の場合、ほかは捨ててしまっても大丈夫ですからね。

無理やりなんとかするのも時には必要

――置き場を決めようと思ったのですが、そもそも物が多すぎてスペースがありません。すでに部屋が散らかってしまっている状況から、どのように整理整頓すればいいでしょうか。

中島 ADHDの人は、物の個数を厳しく管理した方がいいと言われています。物がたくさんあっても、クローゼットに入れて扉を閉めちゃうと、目に見えていない洋服の存在なんて忘れちゃうんですよね。たまに開けて「こんなのあった!」って新鮮に驚いたりして(笑)。

 それを防ぐための方法は、例えば洋服ならハンガーラックに1シーズン分まとめて一目瞭然にすること。服をどうしても減らせない人には、海外旅行用の大きなバッグにお気に入りの服を5日分だけ入れて、その服だけでしばらく生活してもらい「じゃあ今クローゼットに残っている服は全部捨てられるね」とアドバイスすることもあります。