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 原因その3は、うちの小学生の息子がまさにそうなんですけど「部屋を片付けなさい」って言うと、片付けてる最中に「あっ、これ懐かしいー!」とか言って、ゴールを忘れて脱線していってしまうんです。これも“不注意”と呼ばれる、注意力・集中力が持たないADHDの特徴で説明できますね。

――どの例も身に覚えがあります……。

中島 「部屋が片付けられない」という悩みには、これら3つの原因が関係していると言われています。使ったものを元に戻せない、置き場所を決めていない、片付けの途中で脱線してしまう……。それがADHDの特徴だと言っても、「えーっ、それは誰だってあるんじゃない」とか「甘えじゃないか」と感じる人もいるかもしれませんが、ちゃんと研究結果も出ています。

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 イギリスの心理学者エドモンド・ソヌガ・バークらが、ADHDの子ども71名、その兄弟71名(うち65名はADHDではない)、ADHDではない子ども50名を対象に、9種類の神経心理学検査を行った研究です。

 検査のひとつに、ストループ課題という「うっかり別なことをしそうになるのを我慢する」、抑制制御の力を測定するものがあります。方法は、子どもたちにコンピューターの画面上の表示に従ってマウスのボタンをクリックするゲームを行ってもらうというものです。画面に緑色の矢印が表示されたら、矢印と同じ方向のボタンをクリックすればいいのですが、赤色の矢印が表示されたら、左右が逆になります。

 つまり、赤い右矢印が表示されたら、うっかり右を押しそうになるところを、グッとこらえて左を押さなければいけない。この「グッとこらえて」というのが、衝動性を食い止めるブレーキの機能なんですね。その機能がADHDじゃない子どもよりも、ADHDの子どものほうが弱かった、という研究結果が出ているわけです。

 だからすぐに荷物の中身を見たくなっちゃうし、計画を立てる前に飛びついてやりたいことやっちゃうし、片付け中に脱線しちゃうんですね。

©iStock.com

 ブレーキをかけたり計画を立てたりといった機能は、脳の前頭葉が担っているのですが、その前頭葉の発達が少し遅れている、未熟な状態なのがADHDであると言われています。

無理なく片付けるための仕組みづくり

――片付けられないメカニズムはわかりました。では、具体的にどうすれば片付けられるようになるでしょうか。

中島 まず「使ったものを元の場所に戻せない」という問題がありますよね。多分、いつもハサミを使用する場所の、ものすごく近くにハサミ置き場があれば、すぐに戻せるんですよ。でも、大抵の家はハサミが2、3本しかないから、遠くまで移動してハサミをとって、使ってから戻すまでにも距離がある。それで面倒くさくなってしまうんですよね。

 だから私は家中にハサミを置いてます(笑)。米袋を開ける用、荷物を開ける用、台所用、息子の部屋……至る所にハサミがあるから、近い場所にすぐ戻せるので散らからなくなりますよ。