専門組織がない、人員不足…諸外国と比較した日本の課題
気象庁が火山監視のために主に観測しているのは「火山性微動」「火山性地震」「山体膨張(地殻変動)」「噴火の状況」の4つだ。噴火前の警戒という意味では、基本的には最初の3つの情報を収集して判断している。「火山性微動」と「火山性地震」の違いは、前者が主にマグマ自体が地下で何らかの動きをはじめたことによる連続した震動で、後者は主にマグマに起因する間接的な水蒸気爆発や岩石破壊などによる震動である。「火山性地震」は余震や前震がない。
気象庁は、全国111ヵ所の活火山のうち、過去の噴火の情報がある50ヵ所の火山を24時間体制で監視している。2014年の文部科学省の調査では、大学や研究機関で「主として火山を研究する研究者」は84人だけで、地震の研究者の320人の4分の1に過ぎない。
実際に観測にあたっている専門家は全国で約40人といわれ、「40人学級」と揶揄されてきた。それも減ってきた。気象庁は、御嶽山噴火後に「火山活動評価官」を新たに増員した。しかしその後は、この増員分は流動的な人材とされて、都合よく使われているとする批判もある。
気象庁で火山の専門教育を受けた職員は数えるほどしかおらず、専門家の集団とはいいがたい。結局、大学の研究者におんぶするしかなかった。
一方、米国では54の火山が公共の安全に対する脅威が高いとして、米国地質調査所の専門家が常時監視している。ホームページによると、約400人の科学者が火山活動の監視に従事し、大きな噴火があれば大学など他の研究機関からも研究者が動員できる。
米国以外にも、イタリア、インドネシア、フィリピンなどの地震多発国では、国の一元的な監視組織がある。ここでは、地球科学、火山ガス、地殻変動、地質学などさまざまな分野の研究者が一元的に働いている。日本にだけはこうした組織がなく、気象庁も大学の研究者もバラバラに活動している。